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そうやって好意を全面に出されると、やっぱり嬉しい。
自分に興味を持って、自分だけ見てくれるのが嬉しい。

俺は正直、SMを簡単に許してしまうのは、店のためじゃなくて自分のためなところがある。
痛ぇの我慢したら、「ありがとね」って頭撫でてくれて抱き締められる。
どんだけ苦しくてもなんだか、満たされた気分になってしまう。
Mなわけじゃないと思う。
けど、金が入る以外に理由があるのは自分が一番わかってる。

『お前じゃなくても変わりは沢山いるしな』

『ちっ、なーんだ。つまんねぇ』

『ほかいこ、余所。』


もう聞きたくない、言われたくない。
俺が、いいって言え。
俺だけ見てろよ。

客にそんな独占欲見せても何の得もねーのに、大きな対価を払って、興味を引きたいと思ってしまう。


自分から興味がなくなっていく様を、もう見たくなくて。
自分から人が離れていくのをもう見たくなくて。

セックスはそんなに好きじゃない。
人並みに性欲はあるけど、俺はもともとゲイじゃないし、突っ込まれることが好きじゃない。
でも、セックスをしてるとき、相手が夢中で自分を貪ってるソレをみるのが、とんでもなく気持ちいい。

相手には今自分しか見えてない、求められてんのは俺だけだって思うのが、気持ちよくて仕方ない。


できるだけ沢山の人をつなぎとめたい。
誰よりも俺が、一番だって。


「志乃さん……どうしたんです。」

「ん、ぁ……なにが」

「だって、勃ってるから……」

「お前が焦れったい触り方するからだろ……」

「志乃さんのほうが絶対にむっつりだ……」

「ちげぇよ、俺はオープンスケベだ。」


気持ちいいんだ。
大衆の目線が全て俺に向いて、俺の名前を呼んで。
みんなみんな夢中になって俺を追いかけて。

あぁ、生きてる。
生きてるって感じた。

俺が歌を歌えばみんながこっちを向いて、聞いてくれる。
話しかけたら返してくれる。
合いの手を頼んだら入れてくれる。

汗をかきながら歌って、声が枯れるまで歌って。

俺を見てる。
俺だけを。

とんでもなく気持ちよくて、幸せだった。


それなのに。

それなのに。