3 そうやって好意を全面に出されると、やっぱり嬉しい。 自分に興味を持って、自分だけ見てくれるのが嬉しい。 俺は正直、SMを簡単に許してしまうのは、店のためじゃなくて自分のためなところがある。 痛ぇの我慢したら、「ありがとね」って頭撫でてくれて抱き締められる。 どんだけ苦しくてもなんだか、満たされた気分になってしまう。 Mなわけじゃないと思う。 けど、金が入る以外に理由があるのは自分が一番わかってる。 『お前じゃなくても変わりは沢山いるしな』 『ちっ、なーんだ。つまんねぇ』 『ほかいこ、余所。』 もう聞きたくない、言われたくない。 俺が、いいって言え。 俺だけ見てろよ。 客にそんな独占欲見せても何の得もねーのに、大きな対価を払って、興味を引きたいと思ってしまう。 自分から興味がなくなっていく様を、もう見たくなくて。 自分から人が離れていくのをもう見たくなくて。 セックスはそんなに好きじゃない。 人並みに性欲はあるけど、俺はもともとゲイじゃないし、突っ込まれることが好きじゃない。 でも、セックスをしてるとき、相手が夢中で自分を貪ってるソレをみるのが、とんでもなく気持ちいい。 相手には今自分しか見えてない、求められてんのは俺だけだって思うのが、気持ちよくて仕方ない。 できるだけ沢山の人をつなぎとめたい。 誰よりも俺が、一番だって。 「志乃さん……どうしたんです。」 「ん、ぁ……なにが」 「だって、勃ってるから……」 「お前が焦れったい触り方するからだろ……」 「志乃さんのほうが絶対にむっつりだ……」 「ちげぇよ、俺はオープンスケベだ。」 気持ちいいんだ。 大衆の目線が全て俺に向いて、俺の名前を呼んで。 みんなみんな夢中になって俺を追いかけて。 あぁ、生きてる。 生きてるって感じた。 俺が歌を歌えばみんながこっちを向いて、聞いてくれる。 話しかけたら返してくれる。 合いの手を頼んだら入れてくれる。 汗をかきながら歌って、声が枯れるまで歌って。 俺を見てる。 俺だけを。 とんでもなく気持ちよくて、幸せだった。 それなのに。 それなのに。 |