練習後に訪れるつかの間の時間…

もし、用事で部室に戻って来た人間がいたとしても、自主練に没頭して遅くなった沢村栄純と、時間を忘れスコアブックを眺めいていた御幸一也がこの時間帯に部室にいることは別段不思議とは思わないはずだ。しかしこの状況は意図的に作られている。先輩後輩やバッテリーという関係ではなく、恋人という関係のために作られた時間。

 しかし、甘い雰囲気のはずの部室は緊張感に包まれていた。

 着替え中の栄純はその手を止め、小さく身体を震わていた。日に焼けていない部分の白い身体は桜色に染まっており、漏れだしそうな甘さを含んだ吐息を必死に噛みしめていた。

 御幸の強い視線。

 全身を愛撫するように不埒な視線は栄純の身体を蹂躙していた。執拗に舐めまわすように明確な意図を持って視姦していた。

「みゆきぃ…」
「何?」

 耐えられなくなり栄純は後ろを振り返るとニヤニヤ笑っている御幸を睨みつけた。

「エロい視線を送るな!」
「造形美の鑑賞してただけだぜ?」
「…は?」

 いきなり言われ、栄純は困惑するしかない。

「人間の身体のラインって綺麗だと思ってな」
「アンタ…美術品をエロい目で見るのかよ」
「まさか!」
「だよな」
「栄純だけだって。美術品に嫉妬?」
「してない!」
「栄純一筋だから安心して」
「………」
「栄純のうっすらとつき始めた背中の筋肉や野郎とは思えない細腰も綺麗だけど、大臀筋からハムストリングスを経て脹ら脛、足首が引き締まってて綺麗なんだよ!栄純の身体ってホント、芸術的に綺麗!」
「いや、力説されても困るんだけど」
「ホントはボクサーパンツも脱いでて欲しかったんだけどな!」
「…っ!ばっかじゃねーの!?」

 顔を真っ赤にして怒鳴りながら、ジャージを履いた。それを心底残念そうな顔で御幸は見ていた。 元々栄純はトランクスだったが恋人となった時にいつの間にか御幸の手により綺麗なラインが見えない!という理由で全部ボクサーパンツに変えられた。(ちなみにそのトランクスの所在は現在不明である)

「抱き締めて欲しい?」
「いくない!」
「視線だけで感じてたくせに」
「っ!」

 極上といってもいい輝くような笑顔で御幸は両腕を広げ、じりじり迫ってくる。栄純は観念してその胸の中に収まることにした。濃厚な御幸の匂いが鼻腔を占める。この匂いを嗅ぐとドキドキするのと同時にひどく安心する。変態だが、結局のところ栄純も御幸に惚れているのだ。

「やっぱり、鑑賞するより触るのが一番だな」
「ケツを揉むな!!」
「期待してたくせに」
「〜〜〜っ!」

 図星だった栄純は御幸のTシャツの裾を強く掴んだ…


END


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