お値打ち価格

「誕生日おめでと」
「えっ」
「えっ、何」
「もしかしてみょうじ、俺のこと好きなの……?」
「いや別に」
「ちょっと! 俺の青春の1ページを1コマ目の時点でビリビリに破くのやめてくんない!」
「私を巻き込むのをやめてくんない? たかだかジュース1本で」
「わっかてねーーなぁ! 良いか、この激辛トマトジュースを買ってくれたことよりも! 俺の誕生日を覚えてくれてたってことに意味があんだろ!」
「こんな誕プレなのにそこまでの価値を見出してくれてありがとう」
「いえいえこちらこそ」
「でもまぁ、感謝はしてる」
「カンシャ?」
「スガのその騒がしい感じ、鬱陶しいって思うことも多々あるけど「多々ってまじかよ。鬱陶しいの割合多いのカヨ」けど」
「はい」
「でも、そういうのってわざとしてる部分もあるでしょ? みんなの気持ちをほぐしてあげよう〜的な感じでさ」
「……い、いや別に俺は……」
「純度100バカじゃないから、良い感じで助けてもらってること結構あるよ、私。気遣いの匙加減っていうか」
「な、なんだよー! やっぱ俺のこと好きなんじゃんか!」
「うーん。うん。まぁ。嫌いではないかな」
「…………待って。俺のが好きになりそう」
「アハハ! 百数十円でスガの恋愛感情って買えるんだ。安」
「どうです? お値打ちですよ奥さん」
「えー、どうしよっかなぁ〜」
「俺と青春の1ページを是非!」
「そんな感じで恋愛って始まるもんなの?」
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