風間さんが辞めちゃう

「……課題中だ。作業の邪魔をするな」
「ちょ風間さん。彼女が家にあがるなり抱き着いてるんですよ? 普通は“どうした、怖い夢でも見たか。大丈夫、俺が「どうした」……夢を見ました」
「夢?」
「風間さんが、大学を卒業するんです」
「近い将来そうなるな」
「そしたら風間さん、大学卒業するし就職もするからボーダー辞めるって」
「そうか」
「私、すっごい嫌だなぁ〜って思って」
「あぁ」
「風間さんがボーダー辞めるって言ってるの聞いて“あぁ私、この人のこと好きだったんだなぁ”って初めて自覚してました」
「そこが初めてなのか」
「そこが初めてなの、めっちゃ悲しくないですか?」
「まぁ。複雑ではあるな」
「だって“好き”って気が付いた時にはもう会えなくなるんですよ? そんなの辛過ぎるっ! って思いながら今日起きました」
「だが夢だろう」
「夢でも風間さんと別れるの嫌です」
「……話は分かった。とりあえず離れろ。作業がしにくい」
「ちょっと〜〜! こっち向いて頭ポンポンくらいしてくださいよ〜〜」
「背中に頭を押し付けるな」
「風間この野郎ぉ〜〜薄情者ぉ〜〜!」
「ハァ」
「あっやべっすみませんごめんなさい離れまふっ」
「良いか。なまえが見たのは夢だ」
「ふぁい」
「俺はボーダーを辞めはしないし、もし辞めたとしてもなまえとの関係まで終わるというわけではない」
「そうれふね」
「夢は夢だ」
「そんなよほはよほみらいに」
「なんと言っているか分からん」
「らあこの指はなしれくらはい」
「……ふっ」
「んうっ!? わっ、もうっ! 急にチューするのずるいですっ!」
BACK
- ナノ -