闇堕ち

※迅闇堕ち話です
※バッドエンドです
※不快に思われる方もいらっしゃるかもしれません







 ひゅう、と吹き荒ぶ風は一体どこから吹いているのだろうか。出どころすら掴めない生温い風は、絶えず血生臭い匂いを鼻腔に届け、目の前で起こっていることが紛うことなき真実であることを告げてくる。
 どうして、なんで。そんな疑問が溢れてやまない私を、迅はただただ見下ろしている。いつもはサングラスに阻まれていても、その奥にある瞳が穏やかなものであると確証を得ることが出来ていたのに。目の前の惨状はそれを覆すに容易い。

「城戸派? 忍田派? そんな枠組み、どうでも良い」
「迅は……違うでしょ?」
「違うって? 何が? なまえは俺の全部なんて知らないでしょ?」
「でも……こんなことするような人じゃ、」
「それはなまえの勝手な解釈。それと違ったからって、勝手に絶望すんのも、押し付けるのもやめてくんない?」

 歪みを見せる口元。歪な笑みを浮かべ、こちらに歩み寄ってくる迅に恐れを抱く脳は、自然と足を後ろへと退かせる。……だめだ、今目の前に居る迅から逃げたら、きっと、取り返しのつかないことになる。今ならまだ間に合う。そんな願いを見抜いているのか、すぐ隣に立った迅がぽつりと「もう手遅れだから。……これは確定してる」と静かな絶望を告げてきた。

 どこで何を間違えしまったんだろう。そんな今更な考えを辿ってみた所で、私の首元に当てられた風刃を止めることなど、私には出来なかった。
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