生き様

 幕末は色んな思惑が蠢く時代だ。だからこそどの時代よりも多く訪れ、幾度となく時間遡行軍と対峙した。けれども歴史を変えようと目論む行為は止まることを知らず、今回もまた幕末の京都へと出動要請が来てしまった。ここ最近あまりにも続く要請に、正直皆疲労を隠せない。

「今動ける男士は……」

 モニターを確認し、刀剣男士のコンディションを確認してゆく。遠征に行っている男士や出陣から戻ってきたばかりの男士を除き、ピックアップした男士たち。そのうちの一振りの名前を見つめ、さてどうしたものかと思い悩む。

「なんじゃあ主。わしは動けるぜよ」
「でも……」
「こん場所というか、この事件に誰よりも詳しいのはわしじゃ。そのわしが行かんで、誰が行くがかえ」

 陸奥守さんがいつものようにニカっとはにかむ。陸奥守さんの笑った顔はいつだって私の支えだったけど、今はその顔を見て安心することが出来ない。だって彼が向かおうとしている先は、慶応3年の京都近江屋なのだ。

「顕現した時に言うたろう。わしの役目は分かっちう」
「でも……今回の出陣は……」
「わしは、今でも思うがよ」
「え?」
「龍馬はまだ死ぬべきやなかったち」
「っ、」
「ほうやけど、それが歴史じゃ。その歴史を守るいうがは、龍馬の生き様を守るいうことぜよ」
「陸奥守さん、」
「大丈夫。わしは今でも龍馬の生き様が好きやき!」

 そう言って再び笑う陸奥守さん。その笑みを見て、今度こそ私も気持ちを固める。再びあの場に陸奥守さんを向かわせるというのは、ひどく残酷なことにも思える。だけど、それ以上に、陸奥守さんがその手で坂本龍馬の歴史を守りたいと望んでいるのならば。私は今の陸奥守さんの主として、その思いを守るべきだと思う。

「どうかご無事で」
「ああ! 任せちょけ。わしの今の帰る場所はここしかないがやき!」
「……行ってらっしゃい!」

 私は今の陸奥守さんの主として、陸奥守さんの生き様を守ってあげたい。
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