闇堕ちからのタイムリープで救済された世界線


 首に熱を感じた気がして、ふと目を覚ます。瞬いた先では、風にさらわれたレースカーテンが家の中をふわりと舞っていた。白いレースが儚げで綺麗だと、まだ少し微睡みから戻って来れない頭でぼんやりと思う。

「起きた?」
「マイキー? ……そっか、そういえばそうだった」
「は? 何言ってんだよ」

 ベランダに足を投げ出し、すっかりオレンジ色に染まった空を眺めるマイキー。ゆるりと笑う表情は、これから訪れる夜にワクワクしているようだ。……夜が来ることに、マイキーがこんなにも無邪気に笑うだなんて。

「なんでなまえは泣くんだよ」
「泣いてないよ……あくびしただけ」
「ふぅん、そっか」

 今日の夜、何が食べたい? そう問いながらマイキーの隣に座る。ぴったりとくっ付いた肩はそのままに、あぁでもない、こうでもないと2人して空を見上げぼやく。隣でマイキーの体温を感じられることが、やっぱり私は堪らなく嬉しくなって、もう1度だけマイキーにばれないように涙を零した。

「……俺さ、多分、もっと煌びやかな世界に行くことだって出来たと思うんだ」
「うん。家も、こんな狭い家じゃなくて。もっと広い所に住めたと思う。マイキーなら」
「でも、そんなの全部なくしたって、なまえと一緒に居たいって思ったんだ」
「……うん」
「なまえの寝息に耳を傾けられる場所に居たい。うたた寝してるなまえが起きないでいられる静けさが欲しい」
「……うん、」
「……なまえの、隣に居たい」
「……うん。私も、マイキーの隣に居たい」

 あぁ、やっぱり。マイキーから与えられる熱は温かい。起きる前に感じた熱もきっと、マイキーから与えられる気持ちだったのだろう。私も同じくらいの熱を、返せてあげられてると良いな。
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