太郎次郎じゃなく

「ヘイツッキー! 先週の太郎次郎花子物語のあらすじを教えて」
「…………切りま「ごめんごめんごめんなさい!」ウルサイ」
「機嫌治った?」
「大体、」
「やば。まだだった」
「ハァ?」
「イエスミマセンデシタ」
「……ハァ。大体、僕は君のSiriじゃないんだけど」
「存じてます」
「ならよく平気で開口1番に用件だけ言えるよね」
「ごめん。だって、試合のこと言ったら照れるじゃん」
「ハァ? 照れる? 僕が?」
「ほら照れた。ほんとは言いたいよ、私だって。今日の試合大活躍だったねとか、ブロック相変わらずムカつくタイミングで跳ぶよねとか」
「ムカツク?」
「褒めてますのでご安心ご容赦を」
「……ハァ」
「溜息吐き過ぎでは?」
「早く本題に行って」
「あっそうそうそう! あと数十分後に迫った太郎次郎花子物語7話を前に! 先週のあらすじを教えていただけないかと思いまして」
「僕それ観てないんですけど」
「でもこれまで6話かけて私が感想吐き出したでしょ? 一旦関係図整理しておきたくて。ツッキーそういうの上手じゃん」
「……先週は、確か太郎が次郎を殴って「あ、待って。ビールとおつまみ準備してくるから! ちょいストップ!」……ハァ」
「はいただいま。あの心優しき太郎がまさか殴るとはって感じでビックリしたんだよね〜」
「で、確かブリュンヒルデ玲子が「違う。ブリュンちゃん演じる花子だよ」……花子、が、拳を痛めた太郎のもとに行くか、頬を痛めた次郎のもとに行くか――で終わったんじゃなかった」
「うわー! そうだった! もうどうなるんだろうね!? ヘイツッキー! 今後の展開を教えて」
「だから僕はみょうじのSiriでもなんでもないんですけど」
「ツッキーは太郎次郎どっち派?」
「どっちでもない」
「んもう〜ノリ悪いなぁ!」
「……みょうじはどっち派なの」
「ん〜〜……。ん〜〜」
「あ、良いです」
「ちょっと! せめてもうちょいシンキングタイムちょうだい!」
「大体、たかがドラマでしょ」
「うっっわ! そういうこと言う人に限ってハマるんだからね」
「そもそも観てないんですケド」
「観れば良いじゃん。てか観てよ! そんで語ろうよ!」
「いや、良い」
「えー、そしたらもっとたくさん語れるのになぁ」
「……まぁそこまで言うなら「あ! もう始まる! また今度連絡するね! ありがとツッキー!」……ハァ。毎回電話に付き合ってあげる僕のこと、たまには意識すれば良いのに」
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