仏の俗欲

「信くん今年もチョコ貰った?」
「うん。クラスの女子から何個か」
「そっかそっか。信くんとこの女子みんなお菓子作り得意な子たちだもんね。私も貰ったもん」
「友チョコ文化のおこぼれをもらえてありがたい限りだよ」
「ねぇ信くん。チョコ渡される時、拝まれなかった?」
「何回か危ない動作はあったよね」
「あははっ! さすがに既の所で止めるよね。さすがに」
「“ご利益がありそうだから”って言いながら渡されるのは何回かあったよ」
「去年信くんに渡したあと良い出会いがあったって噂が広まったからじゃない?」
「そうなんだ。それは初耳だったなぁ。道理で去年より義理チョコの数が多いわけだ」
「仏なのかもね、信くんは。まぁでもだとしたらちょっと宗教違いな気がしないでもないけど」
「神様はそこら辺寛容だから大丈夫だよ」
「すごい。信くんが言うとありがたく聞こえる」
「買い被りすぎだよ。俺だって俗欲はあるし」
「ええ? 信くんにそんな心が」
「あるよ。だって俺なまえからのチョコ毎年心待ちにしてるし」
「今年は……甘さ控えめのやつです」
「ありがとう。去年の海ぶどう味も美味しかったよ」
「あ、えっと、一応言っておくけどちゃんと本命だからね」
「うん。知ってる。だってなまえは俺の彼女だし」
「そうだけど。信くんに渡すチョコってなんかほら、お供えっぽいと言いますか……」
「そろそろ神仏から離れて欲しいから、キスしても良い?」
「うえっ!?」
「なまえには仏の俗欲を理解してて欲しいから」
「信くんの目が本気だ……」
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