確かに感じた

「なぁ北子さん! 今度俺らな、吹奏楽部も含めた大きい練習試合あんねん! 北子さん、良かったら来ぇへん?」

 たまに、と釘を刺したおかげで宮兄弟は言いつけをしっかりと守り、適度に足を運んでいる。
 そして今日は宮兄弟にとって、たまにを使う日であったのか、空き教室に弁当箱を手に持ってくるなり、そんな言葉を口にする。

「ツム、まずは挨拶やろがい。北子さん、北さんこんにちは」
「あ、せやった! こんにちは!」

 後から入って来た治に諭され、侑もそれに従ってペコリとお辞儀をする。そんな宮兄弟にみょうじと北も「こんにちは」と言葉を返し、2人を受け入れる。

「それで! 北子さん、どうや? 練習、来てくれる?」
「北子さん、前にバレーに興味ないて言うてたから、無理はせんでええんやで?」

 侑が食いつくように尋ねてくるのに対し、治がフォローを入れる。そんな2人の言葉を順に貰ったみょうじは1度考える素振りを見せる。北も含め、宮兄弟もみょうじの口から出てくる言葉を待った。

「バレー自体に興味はない……けど、稲荷崎のバレー部には興味ある。北さんとかツムサム兄弟とか、尾白くんとかがプレーしよるんは、見てみたいて思う。せやけど、私なんかが行ってもええの? 興味無いて失礼な事言うてしもうたんやけど……」

 その言葉には北が答える。

「“興味無い”が、俺らと接するうちに“興味有る”に変わったんやろ。それは、俺らと関わってきた過程がみょうじさんの結果を変えたて事やんか。俺は嬉しいで。みょうじさんの結果が俺にとってもええ方向に変わってくれたて思うし。やから、みょうじさんが行きたいて思うてくれてるんなら、来てくれたらええ」
「……?? サム、意味分かるか?」
「うーん……北さんも来て欲しい、いう事なんとちゃうか?」
「あはは、ツムサム兄弟には分かりにくかったかな。私はちゃんと分かったで。小難しい好きやしな。北さんも、ツムサム兄弟も、ありがとうな。……試合、観に行きたい。行ってええ?」
「勿論」
「よっしゃ! 俺のサーブ、見てな! 1番の見所やから!」
「あほ、俺のツムの無茶振りに応えてみせる格好良い所が見所に決まっとるやろ」

 みょうじの言葉に全員が頷く。そんな3人の反応にみょうじは「ツムサム兄弟の暴走を止める北さんが見所やろな」と笑ってみせる。

「えっ、なんで北子さん知ってんの!? エスパーか?」
「実は試合観に来てたんとちゃう?」

 そんなみょうじの言葉に目を見開く侑と治。その様子が図星だという事を物語っていて、みょうじは声を上げて笑う。

 ひとしきり宮兄弟のやりとりに笑ったみょうじの目線がみょうじを見つめていた北と合わさる。

「試合、楽しみにしてる」
「おん。ウチの試合はそれなりに楽しんで貰えると思うで。コイツらも今以上に騒がしなるけど、そこも見所に違いないからな」
「そうか。ツムサム兄弟はバレーを愛しとるて言うてたけど、北さんは部員を愛しとるんやな。今、主将の顔になってた気がするわ」
「……確かに、コイツらの事放ってはおけんわなぁ。少しでも、守ったらなアカンて思うわ」
「北さんに愛される部員は幸せモンやなぁ。北さんの愛する部員に会うのも楽しみにしとくな」

 そう言って笑うみょうじの笑顔は北にとって、部員と同じくらい大切で、守りたいものだと思った。

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