メロディーは途切れない
圭介という男は豪快な人間である。携帯の画面はバキバキだし、着信音も初期設定のまま。全部、分かればそれでいいというスタンス。そういう男らしいところが好きで、そのままの圭介でじゅうぶん大好きだと胸を張って言える。
だけど、そこに更に好きの要素を付け加えてみせるのが場地圭介という男の恐ろしい所。
携帯の設定なんて一切分からないのに、というかそのせいで待ち受けは何故かプリクラ。これはマイキーくんに設定されたらしい。「変え方分かんねぇ!」と怒るけれど私に「変えてくれ!」とは言ってこない辺り、どうやら気に入っているらしい。
そういう所も可愛くて好きに拍車がかかるし、なにより画面に映る圭介はとても楽しそうに笑っている。このプリクラを圭介自身がノリノリで撮ったらしいということが画面からでも伝わってくる。
そういう、仲間と楽しむことには全力を注げる所も大好きだ。
だけど、私が何より1番の愛おしさを感じてしまうのは圭介の携帯から鳴る着信音。前に私が「好きだ」と言った歌手の最新曲。圭介の携帯が見つからないと騒ぎになった時、私の携帯から圭介の携帯へと着信をかけた時、それは圭介のポケットから鳴り響いた。
圭介は誰かからもらったと言っていたけれど、後から三ツ谷くんに「アイツ、自分で必死こいて設定してたんだぜ」と耳打ちして貰った。それを聞いてからというもの、私はその着信音が圭介からの想いを歌ってくれているメロディーに思えて鳴る度に嬉しくなった。
「おい、うるせぇ」
「へへ。ごめん」
「……たく。そんなに好きなら自分の携帯に入れりゃいいだろうが」
「うん。でも、私は圭介の携帯から聞きたいんだ」
「はぁ? なんだそりゃ」
一緒に居る時、わざとに圭介の携帯に着信を入れれば圭介はめんどうくさそうに眉根を寄せる。だけど私があんまりにも嬉しそうに笑うからか、圭介も着信を切ることはない。それがまた圭介の気持ちを表しているようで堪らなく嬉しい。
「そんなに好きかよ」
「うん、大好き」
ずっと、ずっと、この歌が鳴り響きますように。