※ただし、

 これをされるとウレシイとか、これをされるとトキメクとか。世の中にはそういった一覧をランキングにした記事がいっぱい溢れとう。そんでそれらを暇潰しに覗いてみると、大抵コメント欄に「※ただし、イケメンに限る」て書かれてる。

 そらまぁ、イケメンにされたが色々とええもんや。でも、別にイケメンに限らんでもよくないか? とかどうでもいい感想を抱きながらも今日も私はマネージャーとして宮兄弟を強い口調で窘める。

 もしかするとこうやって顔に怒気滲ませて叱りつけるよりも、優しい言葉で諭すように言うたがええんやろか。そんなことを思いながらも、宮兄弟を前にそんな優しさ持ち合わせとられんわって早々にその思考をかなぐり捨てたった。 



「なあ。信介もやっぱり優しいオンナノコのが好き?」
「やっぱりってなんや」
「いや今日昼休みにな、記事読んでん」
「なんの記事」
「モテる仕草ランキング」
「しょうもな」

 帰り道に信介と2人で歩きよう時、会話のネタとして昼に読んだ記事を口にするとスッパリと切り捨てられてしまう。まぁ、それでこそ信介や。

「いやでも“※ただしイケメンに限る”ってみんながコメントしとってな。確かに、どうせなら何においてもええに越したことはないやんか。そう考えたらそういうのに当てはまるような態度取ったが信介にとってもええんかなとか思うて」
「……?」

 なんやのその顔。心底何言うてるんコイツみたいな顔すんのやめや。こちとら仮にもアンタの彼女やぞ。……あぁあかん。やっぱり私は※にはなれそうもない。

「そんなん人に寄りけりやろ」
「それもそうやけど」
「せやろ? せやからそないな杞憂とっととやめぇ」
「うん、せやな」
「そんなこと考える暇があんねやったらクソして寝ろ」
「はい」

 まさかこの話題で説教されることになるとは。しかも彼女にかける言葉が“クソして寝ろ”て。普通そこは“温かくして寝るんだゾ☆”とかやろがい。

――でもまぁ、それが信介のええとこやしな。

 信介によって気付かされた今更な考えに絶えず笑みが零れ落ちる。

「ふはっ、でも説教されるんはちょっぴり予想外やわ」
「記事通りに行けばここで説教せん方がモテるんやろうな。……で、なまえはそういう男のが好きなんか?」

 じっと見つめてくる信介。その瞳は私の答えなんか知り尽くしとうハズやのに。ワザワザ確認してくる所、めっちゃかわええ。

「いいや、信介が好き」
「……そういうことや」

 思い通りの答えを得られたことに満足がいったのか、信介の歩みが再び前を向く。分かりにくいけど、確かな笑顔を浮かべて歩く信介の隣で、私もおんなじ想いを重ね合う。

……たしかに、そういうことやな。

※ただし、

――好きな人は除く

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