「ただいまー……」
レンは、家に入ると真っ先にリビングに向かう。そこには、二つの人影があった。そのうちの一人、KAITOがレンに気づいて笑う。
「――あ、おかえり、レン」
「ただいま、KAITO兄……って、何食ってんの!?」
「ふぇ?アイスだよー?」
そう言いながら、KAITOは手に持っていたアイスを口に含む。幸せそうな笑みが顔いっぱいに広がった。
「……!……!!」
そんなKAITOを見て、レンは顔を真っ赤にしながら口をぱくぱくさせる。その拍子に、先程買った物が入った袋を落としたことにすら気づいていない。
「……れーん、」
つつつ、とレンに寄ってきた、レンと瓜二つの少女――鏡音リンがにやにや笑いながら言った。
「何を妄想してるのカナー?」
「っ……うるせえっ」
レンがKAITOから視線を逸らすのとほぼ同時に、ちゅぱっと音をたててKAITOが口からアイスを引き抜く。それは――勿論KAITOは無意識である――妖艶な仕草で、レンもリンも、思わずKAITOを凝視した。
「……?二人とも、どうしたの?そんなじっと見て……」
「なっ、何でもないよ、兄貴っ」
「何でもねえよ、気にすんな!」
「そう……?なら、いいけど」
ほっとする二人から視線を外し、KAITOは眉を寄せる。
「それにしてもこのアイス、随分太いよね……美味しいけど……。んっ、」
そう言ってから、再びアイスを口にくわえた。
「じゃっ、じゃあ俺、部屋行くからっ!」
「へっ?あぁ、うん」
KAITOとリンを置き去りにし、レンは走ってリビングを出る。その顔は依然として真っ赤なままだった。
レンは、部屋に駆け込み、ばたん!とドアを閉める。走ってきた勢いのままベッドに倒れ伏し、ぎゅうっとシーツを握った。
(あれは……何だったんだ……!)
思い出すと、無性に恥ずかしくなる。
うー、とか、あー、とか、意味のない呻き声をあげ、いつしかレンは眠りに落ちていた。
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