【バレンタイン特集!愛しのカレに想いを届けよう】

【ブラウニーには、ラブがかくれてる。】

そんな広告が踊る町中を、1人の美少女じみた少年が歩いていた。美しい金髪を頭の上で結い、緑色の瞳に強い光を灯す彼――鏡音レンは、ふと溜め息をつく。

「……どうすっかなぁ……」

レンは悩んでいた。

今レンの頭に浮かんでいるのは、優しげに笑う青年――KAITO。レンより年上で、兄のような存在であるKAITOに、レンは恋をしている。

そしてそのKAITOの誕生日は、明日――つまり二月十四日。バレンタインなのだ。

いつもなら、「誕生日おめでとう」とでも言って、KAITOの好物であるアイスを渡すのだが。

(いい加減、伝えちゃいたいし)

レンは明後日、KAITOに想いを打ち明けるつもりなのだ。

だが彼には、チョコを作る技術も時間もない。だからチョコ売り場をうろうろしているわけだが。

(……逆チョコ、ってなんか違うよな……)

KAITOは女子扱いされたと思うかもしれない。

(普通のチョコは、もっと違う)

はぁ、と溜め息をついたそのとき。

「れーんっ」

「ぅわああ!?」

突然肩を叩かれた。可愛らしいソプラノは、ツインテールの少女の声。

「み、ミク姉……び、びっくりしたあ」

「てへぺろっ」

ぺろっと軽く舌を出した後、ミクは首を傾げて問うた。

「こんなとこで、何してるの?いつもはチョコなんて食べないのに」

「……あー……えっと……」

そう、レンは普段チョコを食べない。食べろと言われれば食べるが、好き好んで売り場に来るなんてありえない。

「あっ、分かった!誰かにあげるんでしょー。逆チョコっていうの?」

「……うん、そんなとこ」

相手は男だけどな。

それを知ってか知らずか、ミクは愉しげに笑いながら、一つのチョコを指差した。

「……?」

ミクは、訝しげなレンの耳に口を寄せて何かを囁く。それを聞いて、レンは瞳を輝かせた。







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