1人で迷っていたって始まらない――僕はひりひりする顔を洗ってから、レン君に電話をかけた。
呼び出し音を聞きながら、何を言おうか考える。考えが纏まらないまま、レン君は電話にでた。
『もしもし?』
「――え、と……」
いつも通りのレン君の声。
格好良くて優しげな、愛しい声。
「……さっきの、こと。本気?」
沈黙。
お互いの微かな息遣いだけが聞こえる。
そして、暖かい言葉が沈黙を切り裂いた。
『…………嘘だよ。俺は、KAITOのこと大好き。絶対別れたくない』
少し照れたような、レン君の声が優しく耳に染み渡る。
「なんで……あんな嘘吐いたの?」
安堵するより先に、小さな怒りがふつふつと沸いてきた。不機嫌な声で問う。
『KAITOが、本当に俺のこと好きなのか確かめたかった。それだけ……ごめん』
「…………それだけ?」
『うん』
「…………馬鹿みたい」
『……うん』
「ひどいよ…………」
『……ごめん』
「僕だって、レン君のこと大好きなのに。伝わってなかったの…………?」
『ごめん。ごめんね……不安だったんだ。泣かないで、KAITO……』
「…………泣いて、ないよ」
『……そっか』
「レン君に、会いたい」
『俺も。直接話したい』
「…………会おうよ」
『いま、行くから。待ってて』
「うん……待ってる」
僕たちは、嘘を吐く。
それは時に何かを守り、
時に何かを傷つけてしまう。
不安なんだ。
怖いんだよ。
本当は、僕の片思いなのかも知れない。
本当は、僕に"好き"という気持ちがないかも知れない。
わからないから。
確かめるために、僕らは嘘を吐く。
(ひどいよ、レン君)(ごめんって)(……キス、して)(喜んで……)
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