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――その後のことは、よく覚えていない。ただ、ずきずきと痛む腰とシーツについた赤い染み、それから涸れた喉が、何をされたのかを雄弁に語っていた。

「………………っ……………、う」

ひどい。
ひどいよ。

手錠の跡にそっと触れると、僅かだが痛みがはしる。眉を寄せ、重い体を無理矢理起こして風呂場に向かう。

シャワーを浴びる。温水の温かさが体に染みて、涙が一筋、瞳から零れて頬を伝い、落ちた。

どうしてこんな事になってしまったんだろう。
僕が悪かったのかなあ。

そう考えると、涙がどんどんと溢れてきて、止まらなくなる。

風呂場には、シャワーの音と僕の嗚咽だけが響いていた。



窓の外はまだ暗い。時計を見ると、03:45と表示されている。

(…………レンくん)

会いたい。
会いたいよ。

目元がひりひりして痛い。だけどもう何もする気が起きなくて、僕はそのまま眠りについた。





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