注文した物を全て食べ終えると、がくぽさんは僕にこう問うた。

「KAITOさんは、一人暮らしなんですか?」

「はい、そうです……がくぽさんは?」

「私も一人暮らしなんですよ」

そう言って、がくぽさんは意味ありげに笑う。

「気をつけてくださいね。近頃は物騒ですから」

「……?……はい」

女性にするような忠告だ。……僕はそんなに弱々しく見えるんだろうか。確かにがくぽさんよりは頼りないけど。

そしてがくぽさんは、立ち上がりながら言う。

「――ああ、そうだ。KAITOさん、携帯はお持ちですか?」

「持ってますよ。交換ですか?」

「はい、よろしくお願いします」

赤外線通信。お互いに登録して、僕たちはファミレスを出た。



帰宅後、僕はリビングの椅子に座って、レンくん宛てのメールを打ち始めた。内容はがくぽさんのこと。

【今日初めて会ったんだけど……すっごい美人だったんだ!びっくり……あんな綺麗な人だから、綺麗な詩が書けるのかな?】

レンくんから直ぐに返信が来た。今日は休日だから、レンくんの高校もお休みなんだね……とか考えながら、メールを開く。

【神威がくぽって、よくKAITOの曲の歌詞書いてる奴だよな?美人なんだ。
……もし、綺麗だから綺麗な詩が書けるんなら……KAITOも、綺麗な詩を書けるんじゃね?】

「――ふぇ?」

予想もしなかった文面に、思わず声が漏れた。数秒後、レンくんから再びメールが。

【いまのなし!!】

無変換。焦って打ったのだろうか。……本音だって、思っていいのかな……?

【……ありがとう。
じゃあレンくんは格好いい詩が書けるのかな?】

悩みに悩んで、結局できたのはこんな文章だった。これ以上返信が遅れたら心配をかけちゃいそうで、僕は送信ボタンを押す。

「……れん、くん」

ぽつり、と呟いてみた。

直後に訪れた静寂が妙に気恥ずかしくて、僕はテーブルに突っ伏す。その瞬間、携帯がぶるぶると震えるのが伝わってきて、びくんと心臓が跳ねた。

「…………はは」

なんか馬鹿みたいだ、僕。

レンくんのこと考えると、ヘンになる――

ふぅ、とため息を吐いて、僕は返信を打ち始めた。







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