それからの日々は、本当に楽しかった。想いを告げることは出来なくても――二人で笑えてた。辛いことがあったって、レンくんの笑顔を思い出せば、強い気持ちになれた。

僕はきっと、幸せに溺れていたんだろう。だから、いつまでもこんな風に笑えるって、勘違いしてたんだ。



僕の仕事は、歌うこと。

作曲家さんに曲を、作詞家さんには歌詞を、作ってもらって歌う。

今日は、いつも歌詞を作ってくれてる、神威がくぽさんと初の顔合わせの日だ。プロデューサーのキヨテルさんは優しくて気さくな人だっていうけど、やっぱり少し不安。

待ち合わせ場所であるファミレスに、約束の時間の十五分前に着いた。早すぎかな……と店の前をうろうろしていると、後ろから肩を叩かれた。

「わあああっ!?」

「っ!す、すみません……!」

僕はびっくりして振り返り、

「……っ」

そこに立つ男性を見て絶句した。

きめ細やかな白肌。
艶やかで長い紫髪。
すっと通った鼻梁。
美しく澄んだ紫瞳――

とんでもない美人が、そこにいた。

「ど、どうかしましたか?」

「あ、いえ……!すいません見とれてました!」

「え」

「あ」

美人さんは意味が分からなそうに首を傾げる。長い前髪がさらりと彼の頬を撫でた。

「……え、と。もしかして、今日ここで顔合わせをするKAITOさんですか?」

「え、あ、はい!じゃあ、貴方が神威がくぽさん……?」

「はい。がくぽでいいですよ」

にっこりと笑うがくぽさん。……美人だなあ。

「では、中に入りましょうか」

「あ、はい」

がくぽさんに促されて店内に足を踏み入れる。男二人のうえ、片方はとんでもない美人さんだからだろうか。ちらちらと視線を感じる……。

だけど話していくうちに、そんなことは気にならなくなっていた。がくぽさんの話はとても面白くて、僕は夢中で聞いていたのだ。







[ 4/36 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]