それからの日々は、本当に楽しかった。想いを告げることは出来なくても――二人で笑えてた。辛いことがあったって、レンくんの笑顔を思い出せば、強い気持ちになれた。
僕はきっと、幸せに溺れていたんだろう。だから、いつまでもこんな風に笑えるって、勘違いしてたんだ。
僕の仕事は、歌うこと。
作曲家さんに曲を、作詞家さんには歌詞を、作ってもらって歌う。
今日は、いつも歌詞を作ってくれてる、神威がくぽさんと初の顔合わせの日だ。プロデューサーのキヨテルさんは優しくて気さくな人だっていうけど、やっぱり少し不安。
待ち合わせ場所であるファミレスに、約束の時間の十五分前に着いた。早すぎかな……と店の前をうろうろしていると、後ろから肩を叩かれた。
「わあああっ!?」
「っ!す、すみません……!」
僕はびっくりして振り返り、
「……っ」
そこに立つ男性を見て絶句した。
きめ細やかな白肌。
艶やかで長い紫髪。
すっと通った鼻梁。
美しく澄んだ紫瞳――
とんでもない美人が、そこにいた。
「ど、どうかしましたか?」
「あ、いえ……!すいません見とれてました!」
「え」
「あ」
美人さんは意味が分からなそうに首を傾げる。長い前髪がさらりと彼の頬を撫でた。
「……え、と。もしかして、今日ここで顔合わせをするKAITOさんですか?」
「え、あ、はい!じゃあ、貴方が神威がくぽさん……?」
「はい。がくぽでいいですよ」
にっこりと笑うがくぽさん。……美人だなあ。
「では、中に入りましょうか」
「あ、はい」
がくぽさんに促されて店内に足を踏み入れる。男二人のうえ、片方はとんでもない美人さんだからだろうか。ちらちらと視線を感じる……。
だけど話していくうちに、そんなことは気にならなくなっていた。がくぽさんの話はとても面白くて、僕は夢中で聞いていたのだ。
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