今から、ちょうど二年ほど前。

青年と少年は、出会い、惹かれ、そして――恋に落ちた。


「……一目惚れかも」

そう呟いて、俺は携帯を開く。メール作成画面を表示。宛先は、出会ったばかりの青年――KAITO。

【今日はありがとう。楽しかったよ】

打ちこんだ文面は、本音ではあるのだけれど。

――駄目だ、
――こんな何気ないメールじゃ、あいつの心に届かない。

【今日はありがとう。KAITOのこと、大好きになったよ】

「……」

無理だ。

こんなメールは送れない。

「…………はぁ」

難しいな……恋の駆け引きってやつは。

自分で考えたことに笑いながら、俺は違う文面を考え始めた。


「……一目惚れ、なのかな」

ぼーっと今日のことを考えていると、それはあながち間違っていない気がした。

出会ったばかりの少年、鏡音レンのことを考えると、鼓動が少し速くなる。

この気持ちを恋と呼ぶのなら。僕は今まで恋をしたことがないといえるくらい……レンくんに恋をしている。

こんな想いは知らなかった。

――このままそばにいたくて
このまま笑いあってたくて――

伝えられない。

伝えたら、もう二度と会えない気がして。

怖いんだ。

壊れるのが――壊してしまうのが。

僕は……もう、何も、壊したく……ないから。







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