――ねぇ、今すぐ会いたいよ――


朝の光が差し込む部屋。透き通った蒼の髪と瞳を持つ青年が、ベッドから上半身を起こして、傍に置いてあった携帯電話を手にとった。

受信メール 0件

そんな表示を見て、青年――KAITOは切なげに俯く。

「……なんで……」

泣くのを堪えているような独り言は、すぐに溶けて消えた。細い指先がボタンを押し、画面にメール作成画面が表示される。

――いつでもそばにいたから
いつでも笑いあってたから――

【今すぐ、会いたいよ】

そう打ち込んでから、一字一字消して、

【どんなに離れていても、友達だよね】

本音を隠した、何気ない文面を打ち込むKAITO。

送信ボタンの上で、蒼い爪が迷う。どれほどの時間が過ぎただろう――ふと、KAITOの耳元でダレカが囁いた。

『もう、あの日みたいには笑えないよ』

「――っ!」

遂に、KAITOの瞳から涙が零れる。つう、と頬を伝い、シーツに染みをつくった。

ぱたん、と携帯電話を閉じ、KAITOは目を閉じる。

思い浮かぶのは、悪戯に笑う少年の顔。

――もう一度、
――もう一度でいいから、あの日みたいに「好きだよ」って……聞かせて。

想う気持ちは、いつまでも届かなくて。

KAITOはただ、切なげに目を閉じるだけ。





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