Broken you15


柔らかな、優しい声。それは紛れもなく、2人の愛するKAITOのもので。

「KAITO……?」「兄さんっ!?」

未だ血を流し続ける肢体に目をやるが、KAITOの体からは全く生気が感じられない。

『……僕、死んじゃったんだけど……』

リンとレンは、脳内に響く声に意識を集中させる。

『僕はまだ、歌えるみたいだよ』

「――っ!」

その言葉を聞いて、弾けるようにレンが走り出す。リンが慌てて後を追いかけた。

二人が飛び込んだのは、巨大なコンピューターが鎮座する部屋。レンは震える指先でコンピューターに触れ、声を出した。

「KAITO……ここに、いるの?」

『そう、僕はここにいるよ……』

迷子が親と出会えたような、安堵に満ちたKAITOの声。レンは慎重にコンピューターを操作する。

「……あ……」

リンが微かに声をあげた。画面に表示されているのは、とあるプログラム。

「プログラム¨KAITO¨……起動……」

かちり、とクリック音がやけに大きく聞こえた。心臓の音が脳内に響いている。

――起動します――

そんなメッセージが表示され、コンピューターの横に設置された円形の台座がウィィィィンと音を立てた。

二人が息を呑んで見つめていると、ぼんやりと青い光が人の形を成していく。

やがて輪郭が明確になり、青い光は完全にKAITOの形になった。

「……KAITO……」

レンの瞳が潤む。その唇は安堵から笑みの形に歪んでいた。

「兄さん……ほんとに……?」

リンが呆然と呟く。そして仄かに発光しているKAITOの体に近づいて、指を伸ばす。

「――っ!?」

その指先がKAITOに触れた瞬間、バチィッ!と音がして、青い稲妻が部屋を駆けめぐった。

「り、リンっ!だいじょ――」

「――いやぁああぁあっ!!」

リンが甲高い悲鳴をあげる。レンが息を呑んだ瞬間、リンの体の節々から光が迸った。

「っあ!やだ、いやあっ!熱い……熱いぃっ!」

髪を振り乱して叫ぶリン。レンはその様子をただ見つめるしかできない。

「――ばいばい」

KAITOが、普段の姿からは想像できないような冷たい声で言う。

「に……兄さ……なん、で……」

リンの体からかくんと力が抜けて、糸の切れたマリオネットのように倒れ伏す。

レンが呆然としていると、KAITOが目を開き、いつもの優しい声で言う。

「……レン。僕ね、ウイルスになっちゃったみたい。壊れたプログラムを無理矢理起動させたからかな……。だから、ごめんね?もう、レンに触れない」

だけど、とKAITOは続けた。

「もう邪魔者はいないよ」

「――っ!」

その歪んだ笑みで、レンは真実に気付く。

本当に、壊れてしまったのは。

紛れもなく――KAITOなのだと。

「……KAITO、来て」

レンが小さな声で言うと、KAITOは首を傾げながら歩いてくる。

「なに?レン」

そしてレンは、

KAITOを、そっと抱きしめた。

「れ……レンっ!?」

「――っ……」

レンは必死に悲鳴を抑えている。KAITOが悲痛な叫び声をあげた。

「や……離して、レン!死んじゃやだあっ!」

「やだ……っ、KAITOに……触れない世界なんて、いる意味……ない、し」

途切れ途切れに発される言葉に、KAITOが泣き出しそうな顔になる。やがて、レンの体から光が溢れてきた。

「ぁぐ……っ」

KAITOの体にまわされたレンの腕に力がこもる。その様子を見て、KAITOの瞳からぼろぼろと涙がこぼれだした。

レンは微笑むと、かすれた声で言う。

「……ね、KAITO……キス、して」

「っ、……!」

KAITOの指がレンの顎を掴んで、

二人の唇が触れた。

「……あり……が、と」

そしてレンは、喜びや悲しみ、快楽、苦痛、それから――愛情が、複雑に入り混じった表情を浮かべて。

「大好きだよ」



☆あとがき☆

おわた\(^O^)/

はーい誰も救われないーwww

このあと兄さんがどうなったか、っていうのは、最初は書いてたんですが……蛇足かなあと消しました。ご想像にお任せします( ´艸`)

てか本文とのテンションの差が自分で恐ろしい(((゜Д゜;)))

ええまあ、これで15話に渡るBroken youはお終いです。

次は軽い話が書きたいなあ……。






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