柔らかな、優しい声。それは紛れもなく、2人の愛するKAITOのもので。
「KAITO……?」「兄さんっ!?」
未だ血を流し続ける肢体に目をやるが、KAITOの体からは全く生気が感じられない。
『……僕、死んじゃったんだけど……』
リンとレンは、脳内に響く声に意識を集中させる。
『僕はまだ、歌えるみたいだよ』
「――っ!」
その言葉を聞いて、弾けるようにレンが走り出す。リンが慌てて後を追いかけた。
二人が飛び込んだのは、巨大なコンピューターが鎮座する部屋。レンは震える指先でコンピューターに触れ、声を出した。
「KAITO……ここに、いるの?」
『そう、僕はここにいるよ……』
迷子が親と出会えたような、安堵に満ちたKAITOの声。レンは慎重にコンピューターを操作する。
「……あ……」
リンが微かに声をあげた。画面に表示されているのは、とあるプログラム。
「プログラム¨KAITO¨……起動……」
かちり、とクリック音がやけに大きく聞こえた。心臓の音が脳内に響いている。
――起動します――
そんなメッセージが表示され、コンピューターの横に設置された円形の台座がウィィィィンと音を立てた。
二人が息を呑んで見つめていると、ぼんやりと青い光が人の形を成していく。
やがて輪郭が明確になり、青い光は完全にKAITOの形になった。
「……KAITO……」
レンの瞳が潤む。その唇は安堵から笑みの形に歪んでいた。
「兄さん……ほんとに……?」
リンが呆然と呟く。そして仄かに発光しているKAITOの体に近づいて、指を伸ばす。
「――っ!?」
その指先がKAITOに触れた瞬間、バチィッ!と音がして、青い稲妻が部屋を駆けめぐった。
「り、リンっ!だいじょ――」
「――いやぁああぁあっ!!」
リンが甲高い悲鳴をあげる。レンが息を呑んだ瞬間、リンの体の節々から光が迸った。
「っあ!やだ、いやあっ!熱い……熱いぃっ!」
髪を振り乱して叫ぶリン。レンはその様子をただ見つめるしかできない。
「――ばいばい」
KAITOが、普段の姿からは想像できないような冷たい声で言う。
「に……兄さ……なん、で……」
リンの体からかくんと力が抜けて、糸の切れたマリオネットのように倒れ伏す。
レンが呆然としていると、KAITOが目を開き、いつもの優しい声で言う。
「……レン。僕ね、ウイルスになっちゃったみたい。壊れたプログラムを無理矢理起動させたからかな……。だから、ごめんね?もう、レンに触れない」
だけど、とKAITOは続けた。
「もう邪魔者はいないよ」
「――っ!」
その歪んだ笑みで、レンは真実に気付く。
本当に、壊れてしまったのは。
紛れもなく――KAITOなのだと。
「……KAITO、来て」
レンが小さな声で言うと、KAITOは首を傾げながら歩いてくる。
「なに?レン」
そしてレンは、
KAITOを、そっと抱きしめた。
「れ……レンっ!?」
「――っ……」
レンは必死に悲鳴を抑えている。KAITOが悲痛な叫び声をあげた。
「や……離して、レン!死んじゃやだあっ!」
「やだ……っ、KAITOに……触れない世界なんて、いる意味……ない、し」
途切れ途切れに発される言葉に、KAITOが泣き出しそうな顔になる。やがて、レンの体から光が溢れてきた。
「ぁぐ……っ」
KAITOの体にまわされたレンの腕に力がこもる。その様子を見て、KAITOの瞳からぼろぼろと涙がこぼれだした。
レンは微笑むと、かすれた声で言う。
「……ね、KAITO……キス、して」
「っ、……!」
KAITOの指がレンの顎を掴んで、
二人の唇が触れた。
「……あり……が、と」
そしてレンは、喜びや悲しみ、快楽、苦痛、それから――愛情が、複雑に入り混じった表情を浮かべて。
「大好きだよ」
☆あとがき☆
おわた\(^O^)/
はーい誰も救われないーwww
このあと兄さんがどうなったか、っていうのは、最初は書いてたんですが……蛇足かなあと消しました。ご想像にお任せします( ´艸`)
てか本文とのテンションの差が自分で恐ろしい(((゜Д゜;)))
ええまあ、これで15話に渡るBroken youはお終いです。
次は軽い話が書きたいなあ……。
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[mokuji]
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