Broken you14


これで、僕の物語は終わり?

……なんでだろう、僕はまだ、『終わり』じゃないって思ってる。

リンに刺された首も、レンに抉られたお腹も、すごく痛い。血がどくどく溢れて、体がどんどん冷たくなっているのに。

僕はまだ、誰かを信じてる。



「れ……ん、」

愛しげな声で、KAITOはレンの名前を呼んだ。KAITOを死の淵に追い詰めた少年の名前。

「……兄さん!大丈夫なの!?」

リンが叫ぶが、どう見てもKAITOはもう助からない。呼ばれた当人であるレンは、無表情でKAITOをじっと見つめている。

「僕ね、レンのこと……」

KAITOはそこで言葉を切った。喉が痛いのだろう、顔が苦しげに歪んでいる。

だがその瞳には、強い光が宿っていた。

「……すき、だよ……」

からん、と、レンの手からナイフが滑り落ちる。リンがしゃがみ込んで泣き始めた。

「……ぁ……っあああああ!?KAITO、何で!?嘘、や、やだぁ……!」

正気にかえったレンが半狂乱して叫ぶ。碧眼からぼろぼろと涙が零れ落ちた。

「俺が!?俺がやったの、俺の所為なの!?」

「――違うよ!あたしの所為だ、あたしが……!」

ねぇ、とKAITOが呟くと、2人は途端に静かになった。頬を濡らして耳をかたむける。

「キス、して」

「っ……」

レンが顔を歪めて、優しく――慈しむように、KAITOの唇に自らの唇を重ねた。唇が離れると、KAITOは幸せそうな微笑みを浮かべる。

「僕は……きっと、また……」

そう言ってKAITOは、ゆっくりと瞳を閉じた。



「……KAITO……死ん、だ……の?」

レンが呆然と呟く。

「……そうだよ。あたしたちの、所為で」

それに、とリンは淡々と続けた。

「ミク姉も。あたしが、殺した」

「――っ!」

あまりに機械的な口調に、レンはリンを睨み、そして言葉を失う。

彼女の瞳からは、とめどめなく涙が溢れていた。

「なんで……なんで、こうなっちゃったのかなぁ……?これが、あたしたちの終わりなの……?やだ……やだよぅ……っ」

「……」

再び嗚咽を漏らすリン。レンはそっと視線をKAITOの亡骸にやり、その瞳が潤みだしたとき。

響いたのは、

『――まだだよ、』

KAITOの声。

『まだ、終わってないから……大丈夫』






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