Broken you12


ミクの声が聞こえた気がして、僕は体を起こした。レンが不思議そうに見上げてくる。

「ちょっと、ミクの様子を見てくるね」

「んー?……おう」

てきとうに体を拭いて服を着た。レンの視線を感じながら部屋を出る。

なんだか、嫌な予感がした。

ミクの部屋は、レンの部屋があるこの階のひとつ下のフロアにある。そして、リンの部屋も。

「……?」

階段の途中で、僕は首を傾げた。なんだか、鉄錆の用な臭いがする。

嫌な予感がどんどん膨らんで、冷や汗が湧き出てきた。

階段を降りきる。

鉄錆の――血の、臭いが強くなる。

「っ……!」

生理的な嫌悪感をもたらす、強烈な臭い。

何?何が起きてるの?

気付けば、僕は息を荒くしていた。緊張と不安で足が震える。

こんなに強烈な臭い――いったいどれだけの血が。

「――ぁ」

頭の中がぐるぐるして、気付かなかった。

いつの間にか、目の前にリンが立っていた。

「にい、さン」

ひび割れた奇妙な声。乱れた金髪に暗い碧眼。

それから――

「リン……、その血……!」

手首から流れ出すリンの血と、リンの体を汚す血。むせかえるような血の臭いに、思わず眉を寄せた。

「あハ……こわいカお」

そう言ってリンは、片手に持ったナイフをぺろりと舐める。

「なカったことニ、しヨ♪」

「……っ」

可愛い妹であるはずのリン。

その笑顔が、なによりも恐ろしく思えて、僕はリンに背を向けて走り出した。

「あハっ☆おイかけっこだね♪」

リンは無邪気にそう言う。

「はぁっ……っく……はっ……!」

……あの血は、誰の血?

リンから遠ざかっているのに、血の臭いが強くなっているのは何故?

「――っ!」

答えは。

僕の目の前にあった。

「……ぁ……あぁっ……」

喉を切り裂かれた、ミクの

みくの、したい――。

「ぅそ……だ……」

ひた、

と。裸の足がたてる足音。

「嘘だ……!」

「ほんトだよ?」

ひた、

と。首にナイフが当たる感触。

「みくねェは、もウいなイ……」

リンは愛しげに、僕の体に腕を回して。

「……それカら、にいサんもね」

「――ぅああぁあぁっ!?」

首が――

――熱い!

「ばいバい♪」






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