アイスクリームと君。


何でだろう。

――どきどきする。

何なんだろう。

――この気持ちは。

優しい笑顔も綺麗な声も、

ぜんぶぜんぶ、

――俺のものにしたい。



「レン君?」

カイト兄さんが俺を呼んでる。ちょうど兄さんのことを考えていたから、かなりびっくりした。

「ん……どしたの?」

取り敢えず兄さんのところに行き、尋ねる。すると兄さんは優しく微笑みながら言った。

「なんかね、マスターとリンちゃんがお出かけするみたい。しばらく帰ってこないって……」

「――じゃあ、しばらく二人きり?」

「うん、そう」

「へぇ……」

平静を装ってるけど、内心はものすごく動揺してる。兄さんと二人きり?どうしてそうなるんだ……俺はどうすればいいんだ?分かんないよ……。

「それでね、マスターが美味しそうなアイスをくれたの。レン君も一緒に食べよう?」

「え……マジ?いいの?」

「うん!レン君と一緒の方が美味しいよ」

「――っ、……そうかよ」

笑顔でそんなことを言われたら、頬が熱くなって兄さんの顔を見れない……。どうしても態度が素っ気なくなってしまう。

それでも兄さんは特に気にした様子もなく、嬉しそうに鼻歌を歌いながらリビングへ歩いていった。慌ててついていく。

「レン君座ってて。アイス取ってくる」

「うん」

椅子に座って、冷蔵庫を開ける兄さんを眺める。後ろ姿からも嬉しそうな雰囲気が伝わってくる。そんなに美味しいアイスなのか?

「はい、どうぞ」

「ん」

差し出されたアイス。それは、兄さんがいつも食べているアイスの特大サイズだった。

「兄さんが先に食べなよ」

「ん?……あ、スプーン一本しかないね……ごめん。いいよ、レン君先で」

「いやいや……いいって、」





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