奴良家に住むことになった昌浩は鯉伴達に連れられ廊下を歩いていた。

「しかし、昌浩殿はすごいですな〜。見た目、まだリクオ様と年は変わらないのに、そんな大層なことを引き受けて…」

カラスの言葉にみんなうんうんと首を振る。昌浩はピシリと固まり、いいずらそうに口を開く。

「あの、俺、いちお元服は済ましているんですが…」
「「「「えっ!!!」」」」

今度は昌浩の言葉に鯉伴達が固まった。

「うそ……」
《まぁ、今はこんな背丈だしな……》
「うっ……それは世界を渡った影響で、好きでなったんじゃない!」
「じゃあ、本当はいくつなんだ?」
「16です」

鯉伴は予想していたよりも高かったことに驚くが、昌浩が見た目に似合わない雰囲気や言葉遣いに納得いき、少しすっきりした。

「まぁ、年は置いといて見た目はリクオと同じなんだから年も同じってことでいいだろ?」
「そんなぁ〜」
《いいんじゃないか?こっちの世界の知識は無いに等しいんだからあまり変わらないだろ》
「そうかもしれないけど…」

う〜とうなだれている昌浩をよそに、御爺さんは一つの部屋の前に立ち止まった。

「おい、着いたぞ。」
「ここは?」
「お前さんの部屋だ。隣はリクオの部屋だから分からないことが有ったら聞くといい。」
「ありがとうございます。」
「よし、次行くか!」
《どこいくんだ?》

物の怪の問いに鯉伴はいたずらっぽい笑みを浮かべた。

「みんなが集まっている所さ」










ガラッ

「よう!おめぇら、全員そろってるか?」
「「「「「「「二代目!!!」」」」」」
「今日はみんなに伝えることがある!今日からここに住むことになった!間違えて食おうとすんじゃねぇぞ!!」

鯉伴の声とともに後ろから物の怪を肩に乗せた昌浩が出てきた。

「安倍昌浩です。色々とあり、ここにお世話になることになりました。ふつつか者ですがよろしくお願いします。」

そして頭を下げる昌浩。周りは唖然としていた。無理もない、リクオと花見に行っていたはずの鯉伴が子供を連れて帰って来たのだ。おまけにその子供をここに住まわせるという。なにも知らない妖怪たちには理解ができない。

「ゴホンッ…二代目我々は何も知りません、イキナリそのような事を言われてもこまりまする。一体花見で何があったのですか?」

みんなの疑問を一つ目が代表して問う。

「なんだ親父、何も言っておかなかったのか?」

一つ目の問いにキョトンとし、ぬらりひょんを見る鯉伴。妖怪たちも視線をぬらりひょんに送る。

「はぁ〜、こうゆうのは総大将のお前が伝えることだろう」

呆れてものも言えないぬらりひょん。こんな事でいいのかと頭をかかえる。

「それもそうだな…いいかおめぇら」

めんどくさそうに納得した後、空気は一変した。

「今日の昼、リクオと花見をしている時に羽衣狐に襲われた。」
「「「「「なっ!」」」」」
「しかも、俺を動揺させるためか、山吹乙女と似た女になっていた」

鯉伴から語られる話に周りは唖然とし、少しずつざわつき始めた。


「ならば出入りに行かなくてはいけないのでは?」


「それにその子供とどのような関係が?」


妖怪達はその問いにもっともだと目で訴えてくる。

「出入りはまだいい、それよりも島の見張りの強化だ。それと昌浩は命の恩人だ。」

「「「「「はぁ?!」」」」」

鯉伴ほ答えに妖怪達の心はそろった。何せ昌浩は見た目、リクオと同い年だ。おまけに人間、どこぞの強い妖怪でもないし、ましてやその子供でもない。

「失礼ですが理解できません。その子供は妖怪どころかただの人間、おまけにみたところまだリクオ様とあまり年は変わらない様子。どう考えても400年前、ぬらりひょん様でも倒すのに大変だった敵から二代目を助けるようなこと、想像できませぬ。」

ほかの者たちもそうだそうだと声には出していないが目は言っている。

「昌浩はただの子供じゃない、陰陽師だそれもかなりの腕前だ。」
「「「「「陰陽師ぃぃぃ!!」」」」」
「なおさらいけません!我らは奴良組、百鬼夜行ですぞ!!なのに陰陽師を住まわせるなんて前代未聞です!!」
 


《まぁ、当然の反応だな…ちょっとムカツクが……》
「だねぇ〜、まっ相手は妖怪で俺は陰陽師だし、しょうがないか」

言い争ってる鯉伴と妖怪達を見て昌浩達は呟く。

「すまないね、うちの幹部達は頭が固くて」
「あっお爺さん。」

いきなり声が聞こえ振り返ってみるとお爺さんが立っていた。

「わしは鯉伴の父のぬらりひょんじゃ」
「俺は安倍昌浩です。こっちは物の怪のもっくん。」
《誰が物の怪だ!》
「別にいいじゃん、物の怪の姿してるんだから。」
《良くない!》
「はっはっは」

そこは随分と和やかな雰囲気に包まれていた。




「昌浩は羽衣狐を倒すべく、此処に来たんだ。利害は一致している、お前たちを滅したりしない。それに、助けてもらったのに恩を返さないのか?そんなに落ちぶれてねぇぜ奴良組は」
「そっそれは…」
「私は二代目に賛成です。」

そう言って前に出てきたのは首無。

「いいじゃない、かわいいし。私は大歓迎ですよ」

楽しそうに出てきたのは毛倡妓。
ほかにも、牛鬼やカラス、黒田坊、青田坊、河童や雪女達も出てくる。


ガラッ


「ねぇ!まさひろがいっしょにすむってほんとう?!」

突然ドアが開き、リクオが入ってくる。

「リクオ様!」

雪女が慌ててリクオに近寄る。

「ねぇ、おとうさん!まさひろとずっといっしょにいれるの?」
「おう!昌浩のやらなきゃいけないことが終わるまで何だが、それがいつ終わるか分からねぇんだ。その間住むところがねぇから泊めてやろうぜって言ってたんだ」
「そうなんだ!ぼくさんせいだよ!まさひろといっしょにいたいもん!!」
「そうか、そうか。おい、おめぇらリクオもこう言ってんだ、反対なんて言わねぇよな?」

リクオの期待の眼差しと後ろにいる鯉伴の脅しという名の黒いオ―ラに誰も逆らうことが出来ず昌浩の居候は決定したのであった。

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