ざわざわ


今日の奴良組はいつも以上にうるさかった。

「(うるさい…)」
《(うるさいな…)》

昌浩と物の怪は顔を見合わせた。隣ではリクオがご飯を食べている。

「ねぇ、もっくん。なんで俺達ここに居るんだろう?」
《知るか…》

そう、時は一時間前にさかのぼる・・・










「昌浩、ちょっといいか?」
「何ですか?」

鯉伴に呼びとめられ、立ち止まる昌浩。

「今日、総会があるんだがリクオを連れて一緒に参加してほしい。」
「《はぁ?!》」
「リクオはともかく、なんで俺まで?」
「お前がいたらリクオの話相手になるだろ?」
「いちお俺、陰陽師ですよ?」
《陰陽師が妖怪の総会に参加するってやばくないか?》

もっともな意見だ。昌浩もだいぶ奴良組のみんなと仲良くなったがそれもリクオの側近や幹部の数名とごく一部だけだ。

「まぁそうなんだが、お前にも聞いておいてもらいたい内容なんだ。」
「別にかまいませんけど…」

いつになく真剣な鯉伴に断れず、昌浩はリクオを連れて総会に出る事になった。

「大丈夫かな〜?」
《さぁな》






で今に至るという。



ざわざわ



「リクオ様はともかく、なんでここに陰陽師がいるんだ?」

「総会に陰陽師を入れるなんて…」

「二代目はなにを考えてるんだ…」



ざわざわ



うるさい、非常にうるさい。声が大きいとかではなく、ヒソヒソとあっちこっちからくる視線と非常にうっとうしい。



イライラと闘いながらも時間は過ぎ、襖がすっと開いた。

「よう、待たせたな。」
「おとうさん!」

鯉伴が入って来て、リクオが直ぐに飛びつく。後ろからぬらりひょんも入って来て、幹部達はしーんと静まる。

「さて、今回皆に集まって貰ったのはちょいと重要な話があってな…この話は昌浩にも聞いて欲しかったから呼んだ。文句の有る奴はいるか?」

鯉伴の脅しのような言葉に誰も言わない。

「じゃあ、本題に入る。俺は二代目を降りる。そしてリクオを三代目候補にする。」


ピタッ


一瞬空気が止まり直ぐに動き出した。


「二代目、なにをお考えですか?!」


「リクオ様はまだ幼子ですぞ!!!」


「いきなり何を言い出すんですか?!!!!」


幹部達があっちこっちからすごい剣幕で怒鳴ってくる。
昌浩や物の怪も唖然としていてリクオだけがよく分からずキョトンとしている。

「おい!鯉伴!!てめぇ何考えてやがる!奴良組潰すきか?!」

ぬらりひょんも聞いていなかった様でものすごい勢いで掴みかかっている。

「今まで言わなかったのは悪かったって、親父」
「リクオが三代目になるまで誰が総大将やるんだ!!」
「親父頼んだ♪」
「ふ、ふざけるなぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」



散々暴れまわって落ち着いたところ、一つの質問が出た。

「なぜ急にそんなこと言いだしたのですか?」

みんなもそうだそうだと言わんばかりに見てくる。

「おめぇら、前の羽衣狐の件、覚えてるか?」

そりゃあもちろんと言うように皆がうなずく。

「いわばその対策だ。俺が降りて親父が戻れば、外からは奴良組が弱体したように見える。」


鯉伴の考えに一部は不服そうな顔をするもそれが二代目の考えならばと口を閉じた。


「なるほど…」
《そうゆうわけか…》
「たしかに、俺にも関係ないことではないね…」

羽衣狐に関係することだ。昌浩にも聞く価値がある。



「話はこれで終わりだ。解散。」


それを合図にぞろぞろと帰って行く幹部たち、その顔には納得したようなしてないような複雑な感じである。


「おい鯉伴。ホントの理由、聞かせてもらおうか…」

幹部達が出て行き、昌浩達だけになるとぬらりひょんは口を開いた。

「あれがほとんどの理由だ。」
「あれだけじゃねぇだろ?」
「まぁな、今の奴良組は頭が固い奴らばかりだ。リクオは新しい風を入れてくれる、これはその為の序章だ。」

鯉伴の答えにぬらりひょんはため息をつく。

「はぁ〜、わかったよ代理をしてやる。ただし出入りぐらいは手伝え。」
「おう。ありがとな、親父」

こうしてこの騒ぎは収まった。

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