空と雲
ある休日の昼下がり。
「なぁ、少年。俺たちに金貸してくんねぇ?」
「ちょっとでいいからさァ〜。俺達ゲーセンで使い切っちゃってすげー困ってんだ。」
「買い物袋持ってんだ。金は持ってるだろ?」
明らか買い物帰りの少年と数人の不良たち。
どうしよう。非常に困った。
ダメツナだったときはよく絡まれていたが、まさか今になっても絡まれるとは。
この程度の不良たちに負けるわけがないがあまり事を立てたくないのが本音だ。
風紀委員たちに目をつけられたくないし。
「俺、お金持ってないです」
「高級そうな菓子を持っといてそれはねぇだろ?」
「釣りでもいいからさっさと出したほうが身のためだぜ」
「だーかーら!アンタらにやるようなお金はもってない!!」
しつこいなぁ。持ってないって言ってるのに。
うんざりして思わずため息をつき相手を睨む。
「なんだ?その態度…ようし分かった。そんなに痛い目にあいてーんなら望み道理やってやるよ」
「心配しなくても荷物も金も全部俺達がもらってやるから安心しな」
手をボキボキと鳴らしながら近づいてくる不良たち。
相手をするのも面倒だから隙をついて逃げるかと相手を見据えた時、目の前の不良の一人が吹っ飛んだ。
「歯ァ食いしばr…ふべらッ!?」
「「「へ?」」」
ドガッと壁にぶつかりズルズルと倒れる不良。仲間たちも目を点にしてぶっ飛ばしたであろう人物がいる方向を見ると一気に顔が真っ青になった。
「ねぇ、そこの君たち…なに群れてるの?」
手には鈍く銀色に光るトンファー。よく見ると所々に血の跡が付いており、何人もの屍の山が作られたのが想像できる。
「ひ、雲雀恭弥!?」
「やべぇ逃げるぞ!!」
「逃がすわけないでしょ」
気絶している仲間をほったらかしにし我先にと逃げ出す不良たちを噛み殺していく。相変わらず雲雀さん容赦ないな。
久しぶりに見る光景に茫然としていると視界の端からトンファーが向かってくるのが見えた。
「うわぁ!?」
「へぇ…今のを避けるなんて見かけによらずやるね」
まるで獲物を見つけた肉食動物のように獰猛な笑みを浮かべると次々に襲ってくる。
大人の雲雀さんに比べればスピードもパワーも違うから避けるぐらい簡単だがこのままだと買った荷物がダメになってしまう。
仕方ないかと意を決意しもう一つ手に持っている買い物袋…何故か手に取ってしまいポケットマネーで買った羊羹を相手に投げつけると隙をついて死ぬ気で逃げる。
「っ…!?」
「すいません!それあげるんで勘弁してください!!あと助けてくれてありがとうございました!!」
追いつかれないように入り組んだ道を抜け塀を飛び越えたりしながら逃げる。
幸いにも追手は来なかったようで雲雀さんの気配は近づいてこなかった。
「1−A、天宮空…面白くなりそうだね」
後日、雲雀さんに差し出した(投げつけた)羊羹が売っている店に風紀委員の人が買いに来るのを度々目撃されるようになった。
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