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「すいませーん!山本くんいますかー!」


ガラガラとお店の扉を開け、声をかける。いつも笑顔で出迎えてくれる山本のお父さんはおらず、店の中はしんと静まりかえっていた。いないのかなぁ…とあたりを見渡していると、奥の方からバタバタと走る足音が聞こえた。


「天宮!?」

「あ、山本。久しぶり」

「おう!久しぶりだな!どうかしたのか?」

「これ、先生に頼まれて持ってきたんだ」


はい、プリント。とカバンから出して手渡す。


「お、サンキュー!」

「どういたしまして。山本も大変そうだけど…大丈夫?」

「ん?あぁ俺は大丈夫だぜ!俺もってことは…」

「いや、さっき来る途中隼人にもあったから」

「あぁ、なるほど」

「じゃあプリントも届け終えたし帰るね」


山本は大丈夫そうだし、ここにいては修行の邪魔になってしまう。

見送ってくれる山本の視線を受けながら玄関へと向かうと店を出る直前にあ、と思い出したように振り返る。


「山本!」

「ん?」

「さよなら逆転ホームラン!期待してるね!!」

「…!おう!!2アウト満塁でもかっ飛ばしてくるぜ!」


”前”と同じなら山本は一番プレッシャーを感じるだろうけど、でも、山本なら大丈夫。どんなに崖っぷちでも、最後まであきらめず、冷静に。”全てを洗い流す恵みの村雨”だから――――――


(がんばれ、山本)




   ◇      ◆      ◇





全てのやることを終えた空は、夕焼けによってオレンジ色に染まる街中をゆっくりと歩いていく。


「もうすぐ、始まる…」


俺が手伝えるのはここまでだ。彼らなら大丈夫。一般人である自分にできることは、みんなが無事でいることを祈るだけ。


(京子ちゃんたちもずっとこんな気持ちだったのかな…)



やっぱり彼女たちは強い。なまじ全てを知っているということもあるのだろうが、気づいてて何もできないのは、こんなにも心苦しい…。


(いや…)

「”何もできない”んじゃなくて”何もしない”の方が正しいか…」


この戦いが終わったら今度はアレ<未来>が待っている。そのときも自分はこうやって何もしないでただ見ていることしかしないのだろうか…そんなことが、耐えられるのか…。

未来のことを考える度、嫌な気がしてたまらない。何かはわからないけど、きっと、このままではいられないのは確かだろう。いい加減、自分も覚悟を決めなければいけないようだ。









元大空は大きな戦いを目の前にした彼らにせめてもと祈りを捧げる。


「…どうか彼らに、大空の加護があらんことを」



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