空と霧とその後

骸による並中生襲撃事件が幕を閉じた一か月後、一番長く入院していた沢田も復活しみんなで山本の野球試合を見に来ていた。
結局、あの事件のことはリボーンたちからは聞かされておらず、骸のことも黒曜生と誤魔化され何も教えてもらっていない。
骸本人も牢獄に閉じ込められているのか、疲れ果てているのか分からないが夢で会ってすらいなかった。

カキーンと山本が打ったボールが大空に上がっていく。あちらこちらから歓声が上がり、試合は白熱していった。

「わぁ!さすがだな〜山本!!」
「すごいわー!山本君!!」
「本当!特大ゴージャスホームランです!!」
「にゃはは!!ランボさんのおかげだもんね!!」
「ったく、山本ごときに相手チーム何やってんすかね……てめぇら!!しっかりやんねーと暴動起こすぞ!!」
「いや向こう真剣だから!暴動起こしちゃダメだからね!?隼人!」
「野球などやめてボクシングやらんかぁぁぁ!!」
「お兄さんそれ違いますから!?」

観客席…というか俺たちも盛り上がっており、やじを飛ばしたりボクシングに勧誘したりと楽しんでいた。
お兄さんと隼人は相変わらずだなぁと思いながら沢田と一緒にツッコミを入れていく。……あれ?でも俺も沢田綱吉だったわけで、結局ツッコミ役は俺(沢田綱吉)だけなんじゃ…。
気づきたくもなかったことに気づいてしまい愕然とするが周りはお構いなしでヒートアップしていく。…うん、今度沢田と愚痴り合うのもいいかもしれない。俺だけど…。
そんなことを密かに考えながらハルの弁当をかっさらうランボを捕まえる。どうにかお弁当を落とす前に確保来ることができ、この後のビアンキの手作り弁当への逃げ道ができた。


「みーくん、お兄ちゃん頑張ってたねー。ご褒美に夕飯何にしてあげようか?」
「んっとね!僕ね!ハンバーグ!!」


すれ違った親子の微笑ましい会話を聞いた空はふと何かを感じ、親子が去っていった方を見つめると近くに居た沢田に声をかけた。

「…沢田、俺ちょっとトイレに行ってくる」
「あ、うん。いってらっしゃい!」




「ママ!僕ちょっとトイレに行ってくるね!!」
「あら、気を付けていってらっしゃい」
「うん!!」






トイレに向かう途中、ドームの廊下でさっきすれ違った親子の子供と鉢合わせた。
先ほどは一瞬しか感じれなかった“彼”の気配が今ははっきりと感じる。

「初めまして、天宮空君」
「初めまして、みーくん」

おなじみのオッドアイに見つめられながら笑顔で挨拶をすると分かりやすいぐらいに相手が固まった。

「……あなた、分かっていってますよね?」
「もちろん。実物は随分と小さかったんだね―――骸」

分かりやすい冗談を言いながら可愛い〜と頭を撫でると不機嫌そうに手を弾かれる。

「子供扱いはやめてください」
「だって子供じゃん。みーくんww」
「しつこいですよ!!まったく…」

「ごめんごめん」と謝るとじと目で見つめ返してくる。久しぶりのやり取りに嬉しくなっている自分がいるのを自覚しつつ、もう一度頭を撫でると今度は叩き落とされずじっと見つめ返された。

「……空君」
「ん?」
「…君は、何者なんですか?」
「……俺は」

こちらを探るように見つめてくる骸をじっと見つめ返す。はぐらかすのは許さないとでも言っているように見えるが骸が望む答えをまだ俺は出すことはできない。だから―――
「俺は天宮空。平々凡々な、ちょっと不思議な骸の友人だよ」

今ある、もう一つの答えを言おう。これもまた、俺にとっての真実だ。
俺の答え聞いた骸はキョトンとすると大きくため息をつきながら苦笑した。

「君が平凡なら世の中の人間は皆平凡以下ですね。全人類に謝りなさい」
「そこまで言う!?」
「言います。…いつか、君の秘密を暴いてみせますからね」
「できるものなら」

骸ならほんとに暴かれそうで怖いなぁ。こういうのは骸の得意分野だし、気を付けないと。
宣戦布告を受けるもそのやり取りでさえ楽しい。

「僕が勝ったらベルギーのチョコ巡りに付き合ってもらいますから」
「じゃあ俺が勝ったらフランスのチョコ巡りで」
「乗った!!」

チョコという言葉に目を輝かせた骸は見た目も合わさって実に微笑ましかった。そう口にしたら不機嫌になるのは目に見えてる為言わないがいつか話のネタにしてやろう。

「では僕はそろそろ行かなくては…Arrivederci」
「またな、骸」

骸と別れ、元気そうで良かった…と一息つくと沢田たちの所に戻る為に踵を返した。









その夜―――
「さぁ空君!!私にチョコを貢ぎなさい!!疲れたんです!!こんなに疲れたのも空君のせいなんですからお詫びヤケ食いさせなさい!!!」

「意味わかんないよ!!あと昼間のテンションどこ行った!!!」



よく解からない方向に吹っ切れた骸に自棄酒もとい自棄チョコに付き合わされ、しばらくチョコは見たくもないと呟く空の姿があったらしい。

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[mokuji]



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