霧の戸惑い

僕はマフィアが嫌いだ。マフィアはどす黒く、汚い欲望に満ちている。その欲求を満たす為なら人間を物扱いし、家族まで手にかける者もいる。
だから、そんな人間たちも嫌いだ。憎んでいるといっていい。
この目を手に入れた時、僕は誓った。憎き人間の象徴でもあるマフィアを殲滅し、表も裏も大混乱へと巻き込む世界大戦を起こそうと。悪い人間を一掃するためなどそんな綺麗ごとは言わない。僕が、僕自身の望みで世界をどん底に突き落とすのだ。他の誰のためでもない、僕自身の復讐のために…。

そのための第一歩としてエストラーネオファミリーを壊滅させました。彼奴らが僕に与えた力で壊滅させられるなんて滑稽でしょう?
そして、同じモルモットだった犬と千種を仲間にし、マフィア狩りを始めました。
途中で僕たちを拾ったランチアを操り、いくつものファミリーを壊滅させていく。
僕たちにみっともなく命乞いをする奴らの顔はとても愉快だったと同時に吐き気もしました。こんなやつらのせいで僕らはあの地獄のような日々を過ごし、絶望へと叩き落とされたのに自分が殺されそうになると部下もなにもかも見捨て自分だけ助かろうとする。
…ふざけるな。
僕たちは何度も死にかけた。
何度も我を失いかけた。
何度も絶望した。
なのに今更命乞い?彼奴らにそんなことをする権利も資格も存在しない。存在してたまるか。
どんな手を使ってもマフィアを殲滅させる。
そう誓って今まで進んできたというのに――――



「……勝ちたい」
“骸”
なぜ…

「…骸に、勝ちたい」
“お前、ほんとチョコ好きだな”
なんで…

「こんなひどい奴に負けたくない…此奴にだけは勝ちたいんだ!!!」
“お前は俺の大切な友達だよ…骸”
どうして沢田綱吉こいつを見るたびに空君あの子の影がちらつくんだ…!
「骸…お前を倒さなければ…死んでも死にきれねぇ!!」
「っ!?」

ボロボロの身体で、何もかも見透かすように見つめてくる沢田綱吉。
その目を、あの子の影を見るたびに動揺してしまう自分がいる。
この僕が、たかが一人の少年に似てると思っただけでこの体たらく

あぁ、もう…ほんと―――
「しぶといですね……」

―――やり難くて仕方ない



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