7

「はぁ…ダメだな〜俺…」

ガコンと音を立てて自販機から出てきたコーラを取ると近くのベンチに腰を掛けた。
あのままリボーンと向き合っていたら全部吐かされていた気がする。明らかに変な逃げ方だったのがさらに怪しさを倍増させていたのに、リボーンが問い詰めようとしなかったのが不幸中の幸いだ。きっと自分はリボーンが本気で問い詰めようとすれば隠せない。そう簡単に心も読まれなくなったが結局本気になったリボーンに勝てた例がないのだ。どこの世界だろうがリボーンにだけは勝てる気がしない。
気を紛らわせるようにコーラを喉に流し込むと炭酸特有の刺激が伝わる。
このまま家に帰る気は起らず、気分とは反対の明るくどこまでも広がる空をぼんやりと見上げる。

「はひ!もしやこの間ツナさんたちといたランボちゃんのお世話がすごく上手な方ですか?」

突然降ってきた聞き覚えのある声に遠くなっていた意識を戻しあたりを見渡すと肩耳にイヤホンを付けたハルがこちらを見つめていた。
想像していなかった出会いに思わずハルと名前を呼びそうになったのをぐっとこらえ初対面のふりをする。

「あ、君は…」
「そういえばちゃんとお話するの始めてでした!!私三浦ハルって言います!ハルと呼んでください!!」

パタパタと走りより、にこっと元気な笑みにつられてこちらも笑みが零れる。

「俺は天宮空。好きなように呼んでもらっていいよ」
「ではソラさんって呼ばせていただきます!」

それにしても奇遇ですね〜と言いながら隣に座るハル。

「こんなところでソラさんは何してたんですか?…はっ!もしかして恋のお悩みとか!?」
「違うよ、俺はちょっと考え事。ハルは?」
「ハルは気分展開にお散歩中です!」

公園で音楽聞きながらの読書がグットなんです!と本を前に突き出す。最近有名な作家の恋愛小説で男女ともに人気のある本だった。

「あ、その本最近有名だよね。うちのクラスにも何人か読んでたよ」
「そーなんです!!私この作家さんデビューまえからファンだったのでこんなに人気になってくれて超パッピーなんですよ!!」
「そういえは母さんも欲しいとか言ってたな〜」
「はひ!そうなんですか!!あ、だったら今度貸しますよ!読者さんが増えてくれるのは嬉しいです!!」
「え、いいの?じゃあ母さんに聞いてみるよ。」
「はい!」

こんなふうにハルと話をするのも懐かしいな…と思いながらたわいもない話をしていく。
やはり前の友人とまた知り合えるのは嬉しく、ハルに至っては別の学校だから精々ナミモリーヌや商店街とかで見かけるだけだろうと思っていたのでこうして会話できること自体が嬉しかった。
最近は色々考えてばかりだったから少し気が楽になる。
楽しそうに話しかけてくれるハルに癒されながら相槌を打っていると急に殺気を感じ、あたりをそっと見渡した。
平日の昼間の公園はあまり人もおらず、来るとしたらハルや自分たちみたいに学校が休みになったものや一部の人たちだけだろう。
命を狙われていそうな人影は全くない。ということは…狙いは俺かハル。もしくは二人ともかだ。
そういえば骸と一緒に脱獄した奴らの中で殺人鬼の双子も居たはずだ。綱吉だった時、ハルや京子ちゃんたちを人質に取っていたことを思い出し、ある意味此処に居てよかったと小さくため息をついた。

「はひ?どうしましたか?」
「ううん、なんでもないよ」

自分が殺気に気づいていると気付かれないようにハルの意識を自分の方に向けさせる。
新しくできたケーキ屋の話に盛り上がっているハルに気付かれないよう殺気のする方を見るといかにも怪しい黒曜の制服を着た奴がいた。
なんかバイ〇ハザードに出てくるゾンビみたいだな。と心の中で感想を言っているとその殺人鬼がゆっくりと近づいてきた。
ハルが近くに居る今、下手に動くのは危険と判断し、相手が近づくギリギリまでひきつける。
殺人鬼はベンチの後ろまで来ると立ち止まり怪しい瓶を片手にぐにゃぐにゃと動いていた。
その動きにドン引きしながらも相手が意識をそらす瞬間を見逃すまいと神経を集中させる。

「ハル、ちょっとだけ目をつぶって耳塞いでて。後屈んでくれたら嬉しい」
「はひ?こうですか?」

不思議そうにこちらを見ながらも言うとおりにしてくれるハルにありがとうとお礼を言うと真後ろにいる敵にニッコリと笑みを浮かべた。

「女の子に何しようとしてんだこの変態がァァァァ!!!」

ゴンッとすごい音を立てながら回し蹴りを食らわすと面白いぐらい吹っ飛んで行く。上手く蹴りが入ったようで殺人鬼は気を失っていた。

「ソラさん、いったいどうし…ってはひ!なんですかこのいかにもデンジャラスそうな人は!?」
「ただの変質者だよ。それよりハルは大丈夫?なんかされてない?」
「はい、私は特に何も…ソラさんは大丈夫ですか?」
「俺は大丈夫。ちょっとビックリして思わず蹴っちゃった」
「はひー!凄いですねソラさん!!助けてくれてありがとうございます!」
「どういたしまして」
「それにしても…この人気絶しちゃってますけど、どうしますか?」

やっぱり警察でしょうか?と悩んでいるハルに大丈夫だと言うと、空は鞄から縄と取り出した。

「見ていてよかったおは朝占い!ってね。まさかこんなところで役に立つとは思わなかったよ」
「あ!それって朝やってるおは朝の占いですか?」
「うん、いつもは見ないんだけどたまたま今日は見てね。俺のラッキーアイテムが頑丈な縄でなんか気になったから持ってきたんだ。」

おは朝すごいです!!と驚いているハルを尻目に殺人犯を縛り上げると紙に“私は変態です”と書いてそいつの顔に貼りけた。

「よし、これで大丈夫だろ」
「うわー…なんかとってもシュールです」

人気のない公園に怪しげな男が縄で縛られ顔には“私は変態です”と書かれた紙が貼り付いている……うん、やったのは自分だがなかなかシュールな光景だ。

「こうやっておけば此奴も動けないだろうし放っておいてもいいんじゃない?」
「確かにそうですね…あ!じゃあお礼したいのでナミモリ―ヌに行きませんか?」
「そんな気にしなくていいのに…でもケーキは食べたいし、いこっか」
「はい!」

目の前でこんなことが起こってもケロッとしているハルもすごいが、空はそれに気づくこともなくハルと共にナミモリ―ヌへと向かった。


[ 23/36 ]


[mokuji]



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -