空と嵐とその後

学校が終わりザワザワとみんなが帰っていく放課後。
荷物を纏めるとポケットに入れていた紙を取り出し開いた。



“今日の放課後、校舎裏に来い。獄寺隼人”


朝来たらロッカーの中に手紙が入っているというラブレターのような渡し方なのに、中身が果たし状のような文面に思わず笑いそうになった俺は悪くないと思う。

先日初めて獄寺君と会話したあと、同じクラスだからお互い顔を見るが話すことはなかった。
アレがきっかけで少し話せるようになったらいいな〜と期待していた俺にとっては少し残念だったがこんな形でセカンドコンタクトを取るなんて思ってもみなかったからうれしいような複雑なような。
そういえば、挨拶しようとしたらなんか避けられてたし…俺、なんかしたかなぁ?と首を傾げるが心当たりが全然ない。
校舎裏なんてまるで初めて獄寺くんと会った時みたいだ。とくすりと笑うと校舎裏へと足を延ばした。





「よく来たな」
「お待たせ。こうして話すのは久しぶりだね」

校舎を背もたれに待っていたらしい獄寺君は俺が来たのに気づくと近づいてきた。
怒っている様子もないので少し一安心すると向き直る。

「それで何か用?」
「あー…その、この間はありがとな。」
「え?うん。どういたしまして」
「……」
「え、もしかして用ってそれだけ!?」

お礼言うだけって…そんな気にしなくてよかったのに。意外と獄寺君ってマメだな〜。

「ち、ちげぇよ!その、礼に何かって思ったんだがいいの思いつかなくてよ。なんか好きなものないのか?」
「そんな別にいいよ?気にしてないし。獄寺君が元気になったならそれだけで…」
「そうはいかねぇ!お礼も一つ返せねぇなんざ右腕の名折れだ!!」

ディーノさんと似たようなこと言ってる…。
必死な様子にクスリと笑ってしまうと思いっきり睨まれた。

「んーじゃあ…友達になってください」
「……は?」
「だーかーら、お礼なら友達になってよ」
「…そんなんでいいのか…?」

獄寺君がぽかんとこっちを見ているが俺にとってはそんなことではない。
ずっと、綱吉だったときからの願い。確かに獄寺君とは友達だった。けど、右腕とか部下とかそんなのも一切なしに、ちゃんと対等とした友達でいたかった。
“10代目”じゃなくてちゃんと名前で呼んで欲しいし山本やお兄さんたちみたいに軽口をたたけるような関係になりたかったというのが密かな願いだ。
だから、今度は10代目の沢田綱吉としてじゃなく、ただの友達の天宮空として…

「うん、それがいい。俺と友達になってください」
「…しゃーねーな。そんなに言うならなってやるよ」

よく考えればマフィア関係以外での友達なんて初めてらしい獄寺くんもどこか照れた様に顔を背けていた。
俺が初めてかもって言うのはただの想像だけどそうだとちょっと嬉しいな。

「ありがとう!獄寺君!!」
「…名前」
「え?」
「友達なんだろ?隼人で良い」
「…!うん!!」

ヤバい。すっごく嬉しい。思わずにやけていると何へらへらしてんだって小突かれる。そんな態度が嬉しくてやっぱり笑ってしまう。別にMとかそんなんじゃないからね!?
「じゃあ、そろそろ帰ろっか?」
「おう」
「また明日、隼人!」
「じゃあな…空」

校門で別れるとオレンジ色に染まった大空が明るく街を照らしていた。



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[mokuji]



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