空と跳ね馬

ある休日、空はお菓子を買いにスーパーへ来ていた。
今日新発売のお菓子を買いに来たというのもあるが、最近よく遊びに来るようになったチビたちへのお菓子も欠かさない。ついこの間、ランボとフゥ太がイーピンを紹介しに遊びに来てくれたしこれからはもっと賑やかになるはずだ。
前は兄弟のように遊んであげていたが、こういう近所のお兄さんとして遊ぶのも結構いいかもしれない。

「ブドウ飴は絶対だろ…他にはチョコ、クッキー、キャラメル…」

甘やかしていると自覚はあるがやめる気はさらさらない。チビたちの訪問が自分の中でもかなり楽しみなものになっているみたいだ。
もちろん悪いことをしたら叱るしお菓子のあげすぎにも十分注意する。やっていることが完全に保父さんだがマフィアのドンなんかよりよっぽどいい。

「ジュースも買って…よし、これくらいかな?」

財布の中身と相談しつつ、決めたお菓子を持ってレジへと向かう。
時間帯がよかったのかそんなにレジは混んでいない。一番空いているレジを選ぶと、前に並んでいる人の後ろ姿に見覚えがあることに気づいた。
キラキラとした金髪に西洋系の顔立ち。俺が綱吉だった時すごくお世話になったディーノさんだ。
こんなところで会うなんて奇遇だな〜と思っていると何か違和感を感じた。
どこかが変というより何かが物足りない感じ…

「あ、やべっ。財布忘れてきちまった!」

ディーノさん部下は!?
不自然じゃないようにあたりを見渡すが真っ黒なスーツを着ている人はいない。普段は黒スーツの人なんて見たくないけど今回ばかりは居て欲しかった…!
ロマーリオさんもいないみたいだし…。

「おかしいな…確かに出るときは持ってたはずなんが…」

それ財布落としてません!?
部下がいないとおっちょこちょいになるのは相変わらずらしい。
此処では初対面だが綱吉の時お世話になったぶん知らんぷりは心苦しいし…。
チラリと自分の財布の中身を確認するとまだ余裕がある。

「仕方ねぇ。悪いけど連れに財布を持ってきてもらうまで預かって「あの、よかったら一緒に払いましょうか?」…え?」
「後ろもだいぶ人が並んでますし、よかったら」
「それは申し訳ねぇよ!大丈夫。今連れに連絡して…あ、携帯もない」
「……」

微妙な沈黙が流れる中、困っている店員さんに持っているカゴを差し出した。

「…あの、お会計。これと一緒にお願いします」






「ほんと申し訳ねぇ!このお礼は必ずさせてもらうぜ」
「いえ、気にしないでください。そんな大した額じゃなかったですし」
「いや、借りた礼を返さずにいるなんてキャバッローネの名が廃るってもんだ。今度是非礼をさせてくれ!」
「…分かりました。じゃあ、楽しみにしてますね」

近くのコンビニで土下座をせんばかりに謝られて周りの目が痛い。
財布や携帯が落とし物に上がってないか交番に確認しに行ったが上がってないらしく、ディーノさんは頭を抱えていた。

「仕方ねぇ…ツナの家に行って電話貸してもらうか…」
「沢田の家に行くんですか?」
「あぁ。ツナの知り合いなのか?」

てっきり部下の人たちがいるホテルに帰ると思っていました。なんて言えるわけがない。思わずポロッと疑問を口に出してしまったがディーノさんは別の意味に取ってくれたらしい。

「はい。クラスメイトです」
「そうか。…そういや名前聞いてなかったな。俺はディーノ」
「空です。天宮空」
「空…か。いい名前だな」
「ありがとうございます」

沢田の家まで行けますか?と我ながら失礼な質問をしたがこの場合は間違ってないと思う。
少し沈黙が続き

「…おねがいします」

と、深々と頭を下げるディーノさんに不覚にも少し笑ってしまった。


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