ごちゃまぜ | ナノ
夏が近いこの時期は、夜が明けるのも早い。
空が白み始め、陽が昇る少し前。
自分のすぐ側で聞こえる衣擦れの音に、沈んでいた意識が少しだけ浮上する。
「あぁ、もしかして起こしたかい?」
「ヒ……ノエ……」
随分と掠れた自分の声に、思わず昨夜のことを思い出す。
いつにも増して情熱的に求められたし、求めた。
その結果がこれだ。
自業自得だとわかってはいるが、怠い身体はまだ睡眠を欲している。
「さっき寝たばかりなんだ、まだ寝てても大丈夫だけど」
髪を撫でる手が心地いい。
その手の感触に、再びまどろみの中へと落ちそうになるのを、必死に堪える。
ヒノエの言葉が確かならば、行為が終わったのはつい先程となる。
それなのに余韻にも浸らずに着替えているということは、急ぎの仕事でも入ったのだろうか。
もしそうだとしたら、自分も寝ている場合ではないのに。
そう思うが、さんざんヒノエに愛された身体は鉛のように重い。
起き上がろうと身体に力を入れてみるが、腰に全く力が入らない。
こんなになるまでするなんて、と思ったが、それを強請ったのは自分だ。
その事実に、少しだけ後悔を覚えた。
「今日は一日ゆっくり寝てな。戻ってきたら、また可愛がってやるからさ」
「んっ……」
自分の上に覆い被さるように身体を移動させたヒノエが唇を塞ぐ。
深くされる口吻に、身体の奥に燻っていた熱が再び全身を巡り始める。
「頭領」
けれど、そう言うときに限って邪魔は入る物。
控えめにヒノエを呼ぶ声に、名残惜しそうに唇が離れる。
「チッ……時間切れか。それじゃ、いい子で待ってな」
小さく音をたてて額に唇を落とすと、ヒノエは部屋から出て行った。
残された自分は、この中途半端な熱をどうしたらいいのだろうか。
「……ヒノエの、馬鹿」
小さく呟いて、寝具を頭までかぶれば、ヒノエの残り香が自分を包んでいるような気がした。
どうせなら残り香よりも、あなた自身がいいのに
2008.6.17