重なりあう時間 | ナノ
閑話
閑話
とにかくあなただけを誰も悲しむことがないように。
みんなの幸せが見たくて、
幾度も運命を上書きした。
先生が言っていたように、変えられる運命と、変えられない運命があった。
それでも、確実に運命の結末を変えることが出来た。
それなのに、
何度運命を上書きしても、一人だけ。
貴方にだけ、出会うことができない。
会うことができなければ、その先の運命を上書きすることなんてできない。
ねぇ、浅水ちゃん。
貴方は一体何処にいるの……?
六波羅でいつものようにヒノエくんに再会したとき、その運命は今までのどの運命とも違っていた。
「翅羽?いるならそんなヤツの後ろに隠れてないで出てくればいいのに」
「え?」
弁慶さんと一緒に現れた人は、ヒノエくんの知り合いだった。
私は凄く驚いた。
だって、六波羅で出会うことが出来るのはヒノエくんだけ。
それ以外はそれぞれ会う場所が違う。
だから、その時ヒノエくんと一緒にいるのは、浅水ちゃんだと思ってた。
でも、
「初めまして、神子姫様」
現れたのは浅水ちゃんとは違う、男の人。
折角会えると思ったのに……。
でも、言葉の言い回しとか、ちょっとヒノエくんに似てる。
弁慶さんとも知り合いみたいだから、熊野関係なのかな?
「私の名前は……翅羽と言っておこうかな」
そう言った翅羽さんの表情は、どこか悲しそうだった。
譲くんが白龍に翅羽さんも八葉か聞いていたけど、私は知っている。
この人が八葉じゃないことを。
「違うよ、譲。八葉じゃない。でも、神子と同じで、温かい」
白龍も、翅羽さんが八葉じゃないって言ったけど、私と同じってどういう意味なのかな?
たまに白龍の言葉が抽象的になると、ちょっと困る。
後で先生に相談してみよう。
でも、もしかしたらこの運命が浅水ちゃんに繋がっているのかもしれない。
だって、今までどうやっても変わらなかった運命が、ここにきて突然変わったから。
翅羽さんなんて、私は知らない。
会ったことも、名前を聞いたこともない。
だけど、ほんの些細なことでもいい。
貴方に繋がる切っ掛けを失いたくない。
確かに、八葉のみんなも朔も、白龍も大切だけど、私は浅水ちゃんも大切だから。
全然関係のない浅水ちゃんを巻き込んでしまったことは、私にも責任があると思うから。
だから、
出会うときまで、
どうか無事でいて――。
六波羅で浅水と会ったときの望美視点
2006/12/22