Sincere love | ナノ


 

 sequel.3
  a forked road (2/2)




『このサイト、スッゴく質悪くて住所とか番号載せたら駄目だって規制なんか無いんだ。まだ書いただけで投稿はしてないんだけど』

「……それも俺次第っちゅう訳か…?」

『正解』



もしコレが投稿されたら…?

写真やってある。電話やって分かる。住所やって…

コレを見た腐った男が名前ちゃんに電話してきて家まで押し掛けてくるかもしれやん。
名前ちゃんが、危ない……



「…俺は、どないしたらええんや……」

『さすが物分かりいい!』

「ええから早よ言え言うてんねん」

『じゃあその子に電話して』

「、電話…?」

『もう会わないって』



会わない……

逆に言うたら、俺に名前ちゃんと会うなって言うてんねんか?別れろって…

そんなん、



「嫌や!」

『嫌?』

「俺はあの子と別れへん!俺には、」



名前ちゃんが必要やねん。

そう言いたいのに、さっきの投稿画面をちらつかせる。



『いいのかなー』

「………」

『嫌、なの?白石君』

「…会わへん、そう言うたら名前ちゃんには手出さへんねやな……?」

『もちろん』



苦渋の選択やった。

名前ちゃんと別れへんか、名前ちゃんを守るか。
でも、分かっててみすみす怖い思いさせる事なんか、俺には出来ひん……



「分かった」

『そうこなくっちゃ。あ、』

「、なんや」

『河崎梓』

「は…?」

『私の名前。河崎梓っていうの』



そんなんもん、どうでもええ。

早く早く、なんて急かされて俺は名前ちゃんに発信した……



《もしもし?》



電話越しに聞こえる名前ちゃんの声は何時も通り可愛くて。



「名前ちゃん?俺や」

《うん》

《ごめんね、実はさっき倒れたのって「名前ちゃん」》



これ以上聞いてたら別れるんつらなる。
ずっと、聞いてたい俺の好きな声。



「もう、会われへん」

《……え?》

「家にも行かへん。俺ん家にも来やんで」



こんなん、本心やないねん。
名前ちゃん、会いたい。



《く、蔵?どうしたの、何の冗談、》

「冗談やない本気や」

《――――…》

「そういうことやから。切るで」

《蔵っっ!?》



最後に俺の名前を呼ぶ名前ちゃんが、痛かった。

冗談やろ?って聞いてくる声に頷きたくて自分が言うた言葉に後悔した。

すでに泣きそうでうわずってた声。
ごめん。ホンマごめん。
名前ちゃんごめん……

せやけど、これ意外どうやって守ってあげたらええんか分からへんねん…



『そんなこの世の終わりみたいな顔しないでよ』

「…………」



“みたいな”ちゃう。

名前ちゃんが居てへん生活やなんて終わったようなもんや。



『まぁいいや、これから宜しくね白石君』

「アンタがそんな女やったとか想像せえへんかったな…」



告白してきた時は、どっちか言うたら控えめで女の子って気したのに。



『始めは純粋に白石君が好きだったんだけど、あの女が何も知らないで幸せそうに笑ってる顔見てると腹立っちゃって』



何も知らんで幸せやと?
阿呆抜かすなや。あの子やっていっぱい傷付いてきた。いっぱい泣いてきたのにお前に何が分かんねん……



『ちょ、ちょっと!何処行くのよ!』

「…トイレや」



医務室を出て行こうとする俺に慌ててた。
お前が何しでかすかも分からへんのに帰ったりせんわボケ……



「ハァ……」



トイレに行くなり出た溜息。


俺が、泣かせた。
思ってもない言葉で傷付けた。
俺が、俺が……



「名前ちゃん……」



もう会えへんなんか、嫌や…
会って笑って好きやって言いたい。好きやって、言われたい……


俺は携帯を取り出して発信ボタンを押す。



《モシモシ》

「財、前?」

《どうかしたんです?》

「名前ちゃんの事、頼んでええかな…」

《……は?言うてる意味が、》

「泣いてんねん」

《泣いてる…?》

「俺が泣かせた……」

《―――…》

「ほなな、」



用件だけ言うて電源ボタンを押して電話を切ると、溢れたのは涙だけやった―――…


(sequel.3 END)



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