act.8 (3/4)
昨日、名前が泣いた時。
仁王のせいだとしても俺は仁王を責める気にはなれなかった。
俺だってアイツが好きだから、仁王の気持ちも分かるし。
俺なんか現実逃避した卑怯者だから寧ろ仁王が羨ましかった。
でも、今日も名前が泣いた。
オサムちゃんのせいだって言ってたけど、元々の原因は仁王にあるに違いない。
さすがに二度目は黙っていられなかった。
「仁王、ちょっといい?」
『…………』
放課後、部活に行こうとする仁王を引き止めて。
部活の前に話したかったんだ。
モヤモヤしたままはきっとテニスにだって響くから。
『ブンちゃん、部活遅れるぜよ』
「幸村には遅れるって言った」
仁王は頭をポリポリ掻いて自分の席に座った。
仁王のことだから俺が話そうとしてることが分かるんだろう。
「なぁ仁王、お前どうゆうつもりな訳?」
『どうって?』
「何回、アイツ泣かせたら気が済むんだよ…」
仁王は酷く眉間にシワを寄せた後、フッと笑う。
『ブンちゃんこそ名前の味方について善い気分になっとるんじゃなか』
「!!お前……っ!」
『好きなくせに強がるん止めんしゃい』
「…別に強がってなんか……」
『見よるこっちが惨めなんじゃ』
「……っ、」
むかつく。
死ぬほど仁王にムカついた。
俺と仁王が正反対なタイプだってことくらい分かってる。
けど中学の時からそれなりに仲良くやってきた。それなり、寧ろ親友じゃねぇかなんて思ってたのに。
こんな事ですれ違うなんて。
ムカつく反面切なくなった……
(200806/移動20120211)
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