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「中学3年1組、渡ゆずりはさん。大至急、本部受付までいらしてください」

和室中に響き渡った自分の名前に、思わずお抹茶をこぼしそうになった。
茶道部の連中から一斉に視線が集まる。接客を中座してもいいか、確認の意を込め先輩をチラ見すると、了承の目配せが返ってきた。

着物で校内を歩くのは不本意だが仕方ない。急がねば。
物凄い量の視線を感じながら、正門に足を進めた。



「すみませーん、渡ですけど」
声を張ってみたが、受付のテントには誰も出てこない。首を傾げながら辺りを見回し、

そしてわたしは固まった。

群がる先輩達の中心に、青い頭と黄色い頭が飛び出している。小さく水色い頭も見え隠れしているだろうか。
だが、先輩達の物凄い食いつきをうまくいなしているのは黄色だけで、青も水色も困っている。

ともかく、誰が何の目的でやってきたのかは、瞬時に理解した。

「あっ、ゆずりはちゃんってあの子っすよね?」
金髪のイケメソはわたしの姿を認めると、ひらひらと手を振った。
「いや?ちげーよ」
だが当の青野郎は、着物姿のわたしがわからないようだ。
「ざけんなガングロ」

何でアンタがここにいんだ目立つんだよボケ、とビンタでもかましてやりたい。手も届かない気がするけど。

「渡さん、あなた一体どういう交友関係をお持ちなの!?」
群がっていた学実が、揃いも揃って鬼の形相でわたしを見た。

「えっと、戻っていいですか? 人違いのようです」
「え、でも……」

先輩はちらちらと向こうに熱い視線を送る。そんなわたし達のやりとりに気付いた青野郎は、にやりと笑った。
「別に、あのことをバラしてm」


「あっ、すみません、間違えました。チケット手元に無いんですけど、こいつらの入場許可出してもらっていいですか?」


先輩達が上気した顔で頷くのを確認し、 男子3人をとりあえず生徒ロビーに押し込んだ。



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