青誕!

夏休み終盤ともなると、図書館は血相を変えた学生でいっぱいになる。
もちろんわたし達もそのクチで。

「あ〜宿題終わんない〜」

英文日記と数学のプリント集に英語の単語調べ。
山積みの課題と、8月30日という表示を見比べ、わたしは大きくため息をついた。

横を見れば、青も同じようにシャーペンと運命共同体となって唸っている。どうやら読書感想文のようで、原稿用紙は真っ白だ。

「全く進んでないようですねぇ〜青君」
「何書きゃいいか全然分かんねぇ……」
「とりあえず他のに逃げてみたら?」
「あとこれだけなんだよクソッ! 明日までに終わらせなきゃいけないってのに」

「ん? 青、8月は31日まであるよ?」
西向く士小の月、この節回しに幾度救われたことか。

「だからだよ。誕生日まで宿題に追われるの嫌だし」
「ん? one more time?」
「ネイティブ発音!? だから、明日俺の誕生日なんだよ」


・・・・・。


「マジで!? 初耳だよそれ!!?」

「だって言ってねーし」
こっちは衝撃的すぎてぱくぱくしているというのに、何事も無かったように原稿用紙に目を戻す青。

やはり、驚きの中心は何と言っても。

「乙女座なんだ……」
「何だその反応。笑われるより刺さるんだけど」
さすがはオトメン。ナイーブなハートをお持ちのようだ。

「ごめんごめん、なんかもう驚きすぎて笑うどころじゃないっていうか」
「ちっともフォローになってねぇよ」
「だって、てっきり獅子座だと思ってたんだもん」

「まーそれはよく言われるな。なんでか知らねぇけど」
あの唯我独尊っぷりでは誰もがそう思うだろう。

「俺を超えられるのは俺だけだ、なんて明言してればそうなるでしょうよ。でも、確かに言われてみれば乙女座っぽいかも」

「じゃ、乙女座っぽいってどんな感じなんだよ?」

「ふむ。一般的には、神経質で潔癖性で正義感が強くて他人に完璧を求める傾向があって、つまりは肩に力が入り過ぎちゃってる感じ?」
「……ふーん」
「あら〜その間は図星?」

「ちげーよ!」
はい、図星なんですね。

「でもそっか、明日なんだ。青、何か欲しいものある?」
「欲しいっつーか、読書感想文を」
「嫌」

「あー、別にお前がくれんなら何でもいいよ」
「…………」
この天然タラシがッ!!
不覚にも、ときめきそうになった。


「……オッケー。また明日ね、青」



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