63


5限開始のチャイムが鳴っている。

「授業始まりましたよ渡さん」
「そういうあなたはどうなんですかツッキーさん」
「あたしは宇宙と交信中なのです」
「彼氏とLINEやってるだけではなく?」

二人用の長づくえに座りながら同じように突っぷしそして動かないわたし達を、エミりんは思いっきりはたいた。

「うおっ地味に痛い」
「6限、単語テストでさぁ、問題出してほしいから早く起きて」
「あ、あたしもだ」


ここ、第三音楽室は軽音のたまり場と練習場とサボり場をかねている素晴らしい部屋だ。前までは授業中のほとんどこの部屋で過ごしていたが、最近は主要科目の授業には出ているため頻度が減っている。

「ゆずりは、次たしか国語っしょ?マジメキャンペーンはもう終了なカンジ?」
「カバンも持ってきてるし。帰る気まんまんじゃん。完璧終わったね」
「いや〜終わってはないんだけど……教室にいんの面倒で」

顔をあげると、にやけたエミりんと目が合った。
「……かなりの誤解があるみたいだけど」と一応言ってみたけど、エミりんは「またまた〜」とちゃかすだけ。

「キセリョと付き合ってるなんて超うらやま〜」
「え!?マジ!?」
ツッキーはがばっとはね起きた。

「だから、違うんだってば。友だちだって」
「水くさいなぁ、ゆずりは。あたしたちの仲でしょ〜?」
その言い方に引っかかりを感じてしまうわたしがいた。

確かに、わたしと一番仲が良いのは彼女たちだ。いわゆる不良の部類に入る彼女たちとは話が合うし楽しい。

けれど、部員でもないわたしがここに居候できるのも渡の名が関係していることを、わたしは知っている。
友情を疑うわけではないが「渡」の令嬢がいれば多少の悪事なら教師は手を出せないのは事実だ。


「クラスの人たちにも言ったけど、本当に違うの」
気付けば、自分で思っていたよりもイラついた声が出ていた。

「なーんだ、マジで何もないのか。あたしだったら猛アタックしちゃうけどな」
二人して彼氏がいるくせに、もったいないと肩をすくめた。

「…すごい幻想を抱いてるみたいだけど、口を開いたらただの残念な奴だよ? ナイわー」

「何言ってんの!? 写真集とか見てみなよ!顔もよくて スタイルもよくてしかもバスケも出来るんだよ!? これ以上何を求めるの!」
ツッキーの食いつきっぷりもナイ。
「実物と二人でリフト乗ったけど、全くときめかなかった」
「うん、いっぺん死んでこい^ - ^」

「ツッキー落ち着いて。ゆずりははきっと男の好みも変わってる…………あ」
エミりんはぽんと手を打った。


「分かった、好きな人でもいるんじゃない?」
「は?」

「あー!たしかに! だからキセリョに見向きもしないのか」
「この頃ずっとすぐ帰っちゃうし。『勉強するから』とか言って付き合い悪いしね〜」
水を得た魚のように目をきらめかせる二人はまさに女子。


「ははは、まーさかー」


わたしはくるん、と指先に髪を巻きつけた



prev/next
back

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -