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図書館に着くと、渡は既に勉強道具を広げていた。問題が解けないのか、眉を寄せ、物凄い速さでシャーペンを回している。

あのモードに入ってるっつーことはかなり集中してんな。

出来るだけ音を立てないように椅子を引くと、渡はふいとペンを回す手を止めた。
「あ、ワリ」

「青? 今日は早かったね」
ぴんと張った空気を緩ませて俺に向き直る。この瞬間が、好きだ。

「うーっす。期末返ってきたぜ」
「ほんと? わたしもちょうど〜で、青の方ははどんな感じだった?」
「さぁな。当ててみろよ」

はぐらかすつもりだったのに、渡にじっと顔を見つめられたおかげで鼓動が早くなっていく。嘘つく時って、心拍数が上がるんだったっけか。

なんて焦りまくる俺に、渡は口角を上げた。
「あーらら、その感じだと罰ゲーム確定のようですな」
「……俺ってそんなに分かりやすい?」

赤司に、渡が好きということがバレていたのはショックだった。

しかもあいつの口ぶりだと、俺がもやもやとした感情を抱いていたとき、もしくはもっと前の段階で気付いていたのだ。

渡が赤司ほど鋭いとは思わないが、やっぱりどこまで俺を見ているかは気になる。

「わりとそうだね。けっこー顔に出てるよ」
「マジか」
即答されてみると、渡本人にも感づかれているような気がしてきた。

けれど渡は何も言わないし、何も変えない。脈はそれなりにあるが、鈍感なのか、それとも……どうなのだろう。

好きな奴ほど考えていることが分からないものなのだろうか。


「そんなことよりさ、ユーとっとと成績表見せちゃいなよ」
「……ほれ、ジャニ―渡。勝手にしろよ」

鞄から取り出した白い紙切れを机の上に放り投げる。渡はそれを手に取ると、露骨にガッツポーズを決めた。

「やった、言い出しっぺの法則凄っ! あ、わたしの方の証拠品はこれね」
「はっ、でまかせじゃねぇかちゃんと確かめてやるよ」

まあそんなことがあるはずも無く、数学の欄内に144人中68位としっかり印字されていた。

それにしても、渡はやればできるタイプの人種らしい。特に、国語は11位だし英語ときたら6位なんて数字が書かれてある。
「何お前。超ムカつく」

「なんとでも言いたまえはっはっは。でも、わたし自身そこまで取れるとは思わなかった」
友達にも信じられないような目で見られたし、と渡は肩をすくめる。

「じゃあいつもはどんなもんなんだよ」
「んー、数学はとりあえず140位台だし、ほかも平均ちょっとくらいかな」
「……それを思うとすげぇなお前


だが、とちょっと首を傾げる。
いつも図書館でやってる勉強は数学が主だったのに、なぜ他の教科も上がっているのだろう。

「ああ、数学の片手間に青の勉強も見てたからかなー。それに、受験対策で授業もちゃんと出るようになったし」
「俺そんなに考えてることダダ漏れ!?」
渡は不敵に笑った。

「ふっふっふ。ま、話の流れ的に何となく? だから、気にしな〜い気にしない」 
「怖ぇーよ!!」
「では本題の罰ゲームですが、」
「切り替え早っ!」


「青。とりあえず目、閉じて?」


え? ここで?



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