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1週間、俺にしては結構努力したと思う。
緑間じゃないが人事は尽くした、はずだ。

けれど、言い出しっぺの法則はマジだった。

「……くっ、あと1人かよ……!」

結果は、186人中94位。
返却された成績表を机に叩きつけ、その上に突っ伏す。しばらくすると、さつきも得点表を持って席に戻ってきた。

「わぁ、大ちゃん、泣きたくなるほど悪かったの?」
「泣いてねーよ!!」
顔だけ上げて睨みつけると、腕の下から成績表を引き抜かれた。

「ちょっ、おい!」
「どれどれ……あれ? 全然悪くないじゃん。ていうか、大ちゃんが国語で平均点取れてるの初めてみた……!」
さつきは、ゆずりはちゃん凄い、と心底感動している。

「俺だってやりゃあできんだよバーカ」
「の割には語尾が消え入りそうだけどね。どうしたの?」

「……言わね」
負けた方が勝った方の命令をひとつ聞く、なんてことをさつきに言ったらどうなることか。

「えー気になるー。歴史も英語も一応赤点じゃないし……」
今、信じられないような顔で振り向いた奴はぶっ飛ばそう。

「誰が言うかよ。おら、先公来たぞ。それ返せ」
えーとかぎゃーとか喚くさつきから成績表を奪い返したところで、終礼が始まった。



3時40分。話が長いウチの担任にしてはかなり早い。
こーいうときに限って、どうしてすぐに行けちまうんだか。

成績表を見せるときの渡に馬鹿にされるビジョンがまざまざと目に浮かび、げんなりする。

だがそれでも渡に会いたくなってしまう俺がいて、ああ、やっぱり重症だなと思う。


ため息をつきながら靴箱を開けようとすると、視界の端に白いものが横切った。まいっか、そう思って靴を取り出した瞬間、肩にぽんと手を置かれた。

……嫌な予感しかしない。
「無視なんて酷いな」
「げ、赤司!? いたのかお前」


帝光では靴箱がクラスごとではなく学年で名前順に並んでいる。そのため、俺と赤司はクラスは違うが「あおみね」と「あかし」だから、当然赤司のは俺の一個下にある。

「そうか、俺はお前の視界に入らないほど背が低いか。そうかそうか……頭が高いぞ青峰」
「分かった、俺が悪かった! ぼーっとしてただけだから!」

ふと見れば、マジギレ一歩手前の赤司の手には真新しいバッシュが下げられていた。どうやら、バッシュが駄目になった時用の予備をこっちの靴箱に入れているらしい。

「ならいい。それで、お前は今日も図書館通いか?」
「あ、ああ」
「今回の期末、全教科赤点をまぬがれたと聞いたぞ。全く、すごいね渡は。俺と緑間はとうに諦めていたのに、一体どうやって教えたんだか」

感謝しておくんだな、とだけ言って、赤司はこの場を後にしようとした。
何の咎めもなくほっとしたのも、例の如く束の間で、


「ああ、もしかして、お前が自覚したからか」

赤司はくすくすと楽しそうに笑って去っていった。



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