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コワモテ、か。
英語の宿題なんてやっていると、つい全く関係ないことが頭の中を回り始める。

柄が悪いとはよく言われるし、自覚もしている。だが、改めて渡に言われて、どうやら俺は予想以上に傷ついていたらしい。
こんなんじゃ今吉に繊細って言われても仕方ねぇな、とため息をついた。

「英作文、お困りでしたら手伝いますよ〜」
渡は隣から、俺の前に立ちふさがる解答用紙を覗き込んだ。

「いらね」
「うわ、人の好意を三文字で踏みにじったコイツ。で、何で微妙に不機嫌な訳?」
あと1センチほどで体が触れ合いそうなことを、渡は気付いているのかいないのか。

「別に」
「今露骨に機嫌悪くなったけど。……あー、もしかしてさっきわたしが言ったこと?」

大体は正解だ。何も言わないでいると、渡は決まり悪そうに手を合わせた。
「ごめんごめん、柄悪いこと気にしてた?」
「……そういう訳でもねーけど、お前に面と向かって言われると、ちょっとな」


一瞬の間。
何かあったかとペンを止めれば、渡は困ったように笑っていた。だが、その強張った表情はすぐに消え、手元の問題集に向けられる。

「だからごめんってば。あ、そうそう、帝光もそろそろ期末?」
「あーちょうどあと1週間って言ってたな。でも、何でそんなこと聞くんだよ?」
渡はいたずらっぽく口角を上げた。やっぱりさっきのは気のせいだったのか。

「この2ヶ月くらいほぼ毎日勉強してるじゃん? 結構点とれると思うのよ。だからさ、今度の期末でちょっと勝負してみない?」
「はあ? ガッコ違うから比べようがねぇだろ」
渡はチッチッチッ、と人差し指を左右に振る。

「そんなこたぁ分かってるって。点数じゃなくてさ、わたしは数学、青は国語で、全校順位で半分以内に入るってのはどう?」

国語が一番苦手だと決めつけられているのはムカつくが、面白い。確かに、慣れない勉強をした成果を試してみたいとは思っていた。

「ふーん。いいぜ、やってやろーじゃん。でも、」
「でも?」
見返りが無きゃ張り合いがない。

「負けた方は、勝った方の言うことを何でも1つ聞く」

「罰ゲームかぁ。わたしはいいけど、言い出しっぺの法則って知ってる? いいの?」
「上等。吠え面かかせてやるよ」


渡は、男の子って単純で良いね、としみじみ呟いた。



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