37

やっと視線が外れ、ほっと一息つく。向かい合わせに座っていてこれでは、密着度の高い図書館の机で勉強できる気がしない。

女にここまで緊張したのはいつ頃ぶりだろう。

恋愛経験がない訳では無いが、どれも長続きしなかった。
さつきの存在も要因の一つだが、何よりも全員がバスケ部のエースとしての俺しか見ていなかったからなのだと今なら分かる。


「なぁ渡。誰かと付き合ったことってあんの?」

高速ペン回しをやめ、渡は顔を上げた。
「は? セクハラ?」
「おお、その返しは予想外だった……」

「うん、どーせ彼氏いない歴15年だけど何か」
渡は怪訝そうに眉をひそめる。

「そうか、意外だな。男慣れしてるし、散々遊びまくってても驚かねぇよ」
「だからー、最初に言ったじゃん。女子校じゃやっぱ無理だから大学に夢をかけるって」

確かに飛行機でそう言われたような気がするが、口止め料は体で払うなんてことも言われたような。

渡も一連の流れを思い出したのか、ばたん、と机に突っ伏した。


「ああああ……やば、思い返したらめっちゃ恥ずかしくなってきた……初対面の人間になんてこと言ってたんだわたし」

「体で払うとか、下ネタ愛してるとかな」
「頼むから忘れて。…あ、でも体で払う云々は半分本気だったかも」
「はあ!?」
本気で自分の耳を疑ってしまった。

「ほら、義務教育中の箱入り娘がそんなことしたらさすがに親も愛想つかすかと思って」
「反抗の道具かよ俺は……」

「でも、青とそんな変な関係になんなくて本当に良かった。今、結構楽しいもん」

今度は俺が机に突っ伏す番だった。


なんてあっけらかんと言ってのけるのだろう。

俺と一緒にいて楽しい、なんて。



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