36
渡と一緒に高校生活を送る。
なんで今吉に言われるまで気付かなかったのだろう。渡は受験すると言っているんだから、当然その選択肢は上がってくる。
「俺、やっぱ馬鹿だわ……」
「そーかそーか、漢字テストで1点取ってくるぐらいにはおバカでしょうな。点数が煙突ってなんだよ煙突って」
渡はバニラシェイクをすすりながら、見覚えのある紙をちらつかせた。
「うわっ!? お前それどっから出した!?」
「ファイルに挟まってた」
ポテトの横に放っておいた勉強用のクリアファイルを指し示す。全く、油断も隙も無い。
「唯一丸ついてたのが、奇跡って……それこそ奇跡っしょ」
「うっせ。テストの前日が雑誌の発売日で、眠すぎて解けなかったんだよ」
「ほっほう。して君、ティッシュは何箱消費したのかな?」
「エロ本じゃねーよ変態。お前はなんですぐそうなんだ」
渡のこれに関しては諦めた方がいいかもしれない。
「じゃあ何読んで寝れなくなったの?」
「……言わねー」
「はあ? 余計に気になるわ」
キセキの世代特集の、月バス。
バスケ選手として「知られている」俺を知ったら、「俺」を見てくれなくなるんじゃないか。
渡だって、他の奴らと同じにならないとは限らない。
「もー分かった分かった。難しい顔するくらいなら、言わなくていいよ」
渡は肩をすくめると、再び参考書に目を落とした。
prev/next
back