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好きだと自覚してしまえば、後は案外シンプルで、ここ数日のモヤモヤが嘘のようにすっきりしていた。

渡はどう思っているのだとか、婚約者のことだとか問題はべっとある。
でも、今はとにかく渡に会いたいと思った。

だが、そんな時に限って邪魔は入るものと相場は決まっているらしい。


終礼の直後、校内放送が響き渡った。
「3年1組青峰大輝さん、至急応接室に来て下さい。繰り返します……」

舌打ちしながら下駄箱の前を通り過ぎる。大方またスカウトの話だろう。
最低でも1時間はかかり、移動時間も考えれば、図書館に行けるのは6時半近くになってしまうだろう。

タイミングはかなり悪い。だが、もしかしたら渡が昨日のように迎えに来てくれるんじゃないか、なんて期待をしてみながらメールを送信し、俺は応接室の扉を開けた。





今日の相手は桐皇学園という高校だった。ここ数年で実績を上げてきているらしい新鋭校で、都内にあるらしい。

結論としては、少し、面白いと思ってしまった。
試合には出るが練習はしないという俺の条件に、前向きに検討すると答えたのに加え、決め手は今吉と名乗った主将の言葉だった。

『最強でいる覚悟ができたら、入れたってもええで』

土下座でもしそうな勢いで頼み込んでくる奴こそ多いのに、俺にそんな提案をしてきた奴は始めてだった。

パンフを眺めながら荷物を取りにゆるゆると教室に戻ると、いつの間にか5時を過ぎていた。

「……ヤッベ」
のんびりしている場合じゃなかった。渡が校門前で待っていないとしても、図書館は7時には閉まるから、急がないとまずい。

俺は誰もいない教室を駆け足で後にした。



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