29

放課後、部室に向かうと、至るところからじろじろと見られた。
まともに部活に出るなんて半年以上ぶりだから、それも仕方ないだろう。

黙ってロッカーを開けようとした途端、不意に鞄の中からバイブ音が鳴り出した。

送信者はやはり渡だった。だが、送られてきたのは
【今どこ?】
たったそれだけで。


「あれ〜? 峰ちんが来てる? 珍し」
「紫原、よく見ろ。青峰がメールを見て固まってるのだよ」

「なになに? あれ、女の子からじゃん。名前的に」
ぎょっと振り向くと、紫原が俺の携帯を覗き込んでいた。その後ろには緑間が腕組みしながら立っている。

「青峰っち彼女いたんすか!?」
黄瀬の追い打ち攻撃により、部室中の視線が俺に集中することになった。
「チッ、んだようっせぇな。そんなんじゃねーし」

彼女、か。

もしあいつがそんな存在だったなら、もう少し気まずそうな反応が返ってくるのだろうか。

「えー嘘っす〜。この頃ずっといなかったのは図書館で彼女と勉強してるから、って聞いたっすよ?」
「何でそんな話になってんだよ。ちげーっつの。なあ緑間?」
咄嗟に話を振ると、緑間は嫌味にブリッジを上げた。

「確かに、こいつがあの女と付き合ってるとは考えづらいな」
「緑間っち、もしかしてそのコと会ったことあったり?」
「ああ。それこそ図書館で」
「えーずるいっす。それで、可愛いかったっすかぁ?」

「可愛いも何も、お前も会ったことあんじゃねぇか。清桜でよ」
「え!? まさか……ゆずりはちゃん!?」
黄瀬は驚きすぎて口をあんぐり開けている。


「へーえ、みんな何だかんだで渡と知り合いなんじゃないか」

すると、赤司が出席簿を片手に体育館通用口から現れた。

「赤ちんもそいつのこと知ってるの? じゃー何も知らないの俺だけ? 」
「お前もいずれ会える機会があるさ。それより、そろそろ練習を始めるぞ。さっさと準備しろ」
「はーいはいはい」
「返事は1回」

赤司はちらっと俺を見ただけで、体育館に向かって踵を返した。


体育館裏にでも呼び出されるかと思えば、何の咎めも無いようだ。首を傾げながらも、運が良かったということにしてバッシュを取り出した。



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