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今日、一番多く言われたこと。

「ちょっと大ちゃん!? 私の話聞いてんの?」
「あのう、すみません、青峰先輩……」
「練習3の答えを、じゃあ、青峰。答えら……おい、目を開けながら寝るんじゃない。授業中だぞ」
「もー、どうなってんの、大ちゃん!」


「……青峰っち、今日なんだかぼーっとしてるっすね」
そして昼休みの今も、向かいに座る黄瀬に同じことを言われていた。

「あ? 話ならちゃんと聞いてるぜ。今日も女に告られたんだろ。自慢とかマジうぜぇリア充自然消滅しろ」
「ひっど!? ってかやっぱ全然聞いてないじゃないっすか。俺は昨日の大会について聞いてたんすけど」
思わず箸を止めた俺を、黄瀬は怪訝そうに見つめた。

「大会で何かあったんすか?」
「……なんもねぇよ」

「あったんすね。赤司っちにも聞いたんすけど、散々な結果だったとしか教えてくれなくて〜青峰っちに聞いた方が早そうなんで」

赤司のほくそ笑む顔が、一瞬脳裏をよぎった。
「35点差で一応勝ったぜ。それだけ」
えーそれは知ってるっすと喚く黄瀬をスルーし、飯をかけこむ。


渡が化粧して見に来てくれたとか、パンチラとか、年上の婚約者とか、嫌だと言ってたくせに名前呼びだった、とか。
考えられる原因の内、黄瀬に言えることなんて1つも無い。

大体、俺自身もよく分からないのだ。渡は俺にとって何なのか、何でこの1ヶ月間つるんで来たのか。最初はただの気紛れだったはずなのに、今や……何なのだろう。

面白い女だから?
勉強を教えてくれるから?
バスケ抜きの俺と接してくれるから?


「おーい青峰っち、ま〜たぼーっとしてるっすよ」

「……分かんねぇよ」
「へ?」
俺の声は、予鈴のチャイムでかき消された。
「あ、やべ。俺、次の授業移動じゃん。急がなきゃ」

「黄瀬ェ。久しぶりに1on1すっか」
「え? え?」
黄瀬は物凄い早さで振り向いた。


「今日、部活出るわ」




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