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86対51。

そこで第4クォーターは時間切れを迎えた。


チーム内で俺以外の全員が2年、相手も強豪校、この2つを鑑みてもこの点差はまずい。明らかに、俺を含め全員が集中力を欠いていた。
……渡のせいで。

パンチラなんて、大サービスどころか健全な男子にはハンデ以外の何物でもない。
女子校育ちだから、世間知らずだから。そんなことは関係なく、渡は完全に確信犯だ。


絞め上げてやろうと真っ先に控え室に向かったもの、渡はどこにも見当たらなかった。さつきがスポドリを渡しながら、いつも通り一人ひとりの改善点を述べているだけだ。

「……あと、今回の試合でみんなに言えることは、集中力が足りなさ過ぎ。ちょっと、大ちゃんもよ! 聞いてんの!?」
「へーへー。それより、渡の奴どこ行った?」
「もうっ! ホントに反省してんの? 赤司君、ものすっごく怒ってたわよ」
「げぇ……あの女マジで絞めてくるわ。どこいんの?」

「さて、結構なご挨拶だな、青峰。点が取れなかったのを人のせいにする気かい?」

赤司は不気味な笑みを浮かべながら、俺の背後に立っていた。

このモードは、殺る気だ。
「赤司……ワリ、俺ちょっと腹が……」
「俺がそんな口実でお前を逃がすと思うか?」
「あ、やっぱ?」

「と、言いたいところではあるんだが、生憎彼女が取り込み中のようだから、仮釈放としてやろう、A級戦犯」
突っ込みどころは満載だが、いちいち反応していたら話が進まない。

「取り込み中? 渡が?」
「携帯片手に選手通用口へ走っていったぞ。電話口で婚約者、と言っていたが」


足が、反射的に動いていた。
さつきの制止の声を遠くで聞きながら、緊張感に包まれたアリーナを駆け抜ける。


やけにじろじろ見られると思えば、まだ自分が着替えてもないことを思い出した。



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