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「ちょっ、どしたの!?」

正面衝突しそうになる一歩手前で急ブレーキを掛ける。が、よく考えてみればそれはそれで大歓迎だ。
どんな柔らかい感触を……

「……ゆずりはちゃん」
声音が怖い。もしや自分の下心が透けていたかと、かなり焦った。

「は、はいぃ!」
「選手控え室に来て。あとメアド交換して」
「え? はあ」
メイちゃんはわたしの手を引き、もと来た方向へずんずん歩みだした。


乙女の心は、秋空より予測できないものらしい。



メイちゃんに連れられるまま、わたしはついに【帝光中選手控室】と書かれた扉の前まで来てしまった。

「えーっと、わたし本当に入っていいの?」
「いいよ。皆には適当に言っとく」
メイちゃんは扉を開けながら、小声で付け足す。

「……感激したの。バスケ部の連中以外に、本心からそんな心配されたこと無かったから」
「さっきの、女子からの風当たりの話?」
「うん。直接突っかかってこなくても、女子とは上辺だけの関係になりやすくて。大ちゃんと付き合ってるって勘違いされやすいし」
「そうなんだ……」

寂しげな笑みにハートを奪われたのも束の間、
「という訳で、今日のマネージャー業手伝って? ほら、信頼置けるし」

「……へーい」
天使の羽は真っ黒だった。



メイちゃんに続いて控え室に足を踏み入れると、あいつは誰だと言わんばかりの視線が集中した。
さあどうしよう。

「おいさつき? なんで渡連れてきてんだよ!?」

真っ先に口を開いた青を華麗にスルーし、メイちゃんは帝に向き直る。

「人手はあるに越したことはないでしょ? 赤司君」


「渡か…。一応他校の人間だが、お前がわざわざ連れてくるぐらいなら、いいだろう。許可しよう」
ペコリと軽く一礼すると、拍手が巻き起こった。よく分からないが、歓迎はされているらしい。


けれど、青だけは不機嫌そうに顔をしかめていた。






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